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スワイプ操作が便利なAnker Soundcore Liberty 4 Pro


Ankerが大人気のワイヤレスイヤホン(以下TWS)「Soundcore Liberty 4」の上位機種「Soundcore Liberty 4 Pro」を発売した。ノイズキャンセルの性能とピンチ・スワイプ操作が気になり、10%ポイントとAnkerの製品提供で紹介しているYouTube動画で配られている10%オフクーポンを適用すれば、約16,000円程度とかなり安くなるので買ってみた。なお、この土日ならダブルポイントで+1000ポイントもつくので更にお買い得だ。
https://www.youtube.com/results?search_query=Soundcore+Liberty+4+Pro
結論から言うと、AnkerのTWSとしては音質、ノイズキャンセル性能ともに最高ではあるが、音質やノイズキャンセル性能に期待して2万円を出すのなら、他に選択肢はある。もっと安い1万円前後の価格帯にも選択肢はある。
この製品の一番の魅力は音質やノイズキャンセル性能ではなく、操作面である。TWSのタップ操作が苦手だったり、嫌いな人も多いと思うが、この製品ではタップではなく、ピンチ(つまむ)で操作をする。音量はスワイプ操作で直感的に変更できる。
ピンチ操作ができるTWSHUAWEI FreeBuds Pro 3、スワイプができるのはAirPods Pro 2や最近出たGoogle Pixel Buds Pro 2で、どれも高めの価格帯の製品であるため、2万円前後の製品でこの操作ができるというのは嬉しい。

ディープグリーンとスカイブルーが良い色だったので、どちらを買うか悩んだ。他にブラックとホワイトがある。

ワイヤレスイヤホン仁義なき戦い

1万円以下から1万円前半の価格帯のTWSで、コスパが良い製品を出していると言われていたメーカーはAnkerだった。2021年8月に登場したSoundcore Life P3は1万円を切る価格で、長い再生時間やアクティブノイズキャンセル、ワイヤレス充電など多機能さで人気になり、更に2022年に登場したSoundcore Liberty 4はハイレゾCODECのLDACやマルチポイントに対応しながら、14,990円と安めでありながら、全部入りイヤホン*1として高い人気を誇った。直近ではAmazonプライムデーセールで約1万円と大幅に安くなっていたこともあり、いまだにAmazonでは1ヶ月に3万点以上(各色の販売数を合計)も売れている化け物製品だ。

Air Pro3」で2023年に躍進したEarFun

こんなAnker一強の状態に一石を投じたのが中国系オーディオメーカーEarFunだった。もともと中国系メーカーは2000~5000円ぐらいの価格帯に「令和最新モデル」というような怪しげなTWSを大量投入しているが、アクティブノイズキャンセルは搭載しておらず、対応アプリもないというような安かろう悪かろう製品しかなかった。EarFunのように、アクティブノイズキャンセルを搭載して、対応アプリも出すという中国系メーカーはあまりなく、SoundpeatsやEdifierぐらいだった。
2023年頭にEarFunから登場したAir Pro 3は充実した性能ながらも1万円を切る低価格で、デジタルガジェット系YouTuberやブログの間で話題になり、知名度が上がっていった。SoundpeatsやEdifierも、低価格で多機能のTWSを投入しているが、EarFunに比べるとそこまでの存在感ではないこともあり、まだまだAnker一強時代は続きそうだ。
一昔前は5000円前後では、ノイズキャンセルを搭載してない製品が多かったが、最近は5000円前後の製品でもノイズキャンセルを搭載しているのが当たり前になってきており、現在はLiberty 4と同機能を持った製品が1万円を切っているというのが現状だ。

EarFunに対抗するAnker

EarFunの攻勢の前に、Ankerも手をこまねいていた訳でなく、今年4月にSoundcore P40iという製品を投入した。これはEarFunに喰われていた1万円以下のシェアを取り戻す戦略的な製品で、ハイレゾCODECに非対応以外は全部入りといえるTWSである。P40i登場時、Air Pro 3を絶賛したYouTubeのレビュアーたちは、P40iを最高のコスパを誇る製品と評価し、1万円以下のTWSの定番であると喧伝した。
しかし、EarFunが1年経って7月末に出した後継機のAir Pro 4は前作より音質が向上し、ハイエンド製品でも珍しいLDACとaptX adaptiveの両方に対応し、これまで搭載してなかった装着検出も搭載、まさに「全部入り」の製品であった。P40iを絶賛していたレビュアーたちはAir Pro 4を絶賛しており、P40iの天下は4ヶ月足らずで終わった。今となっては、P40iはAir Pro 4に音質、機能面ともにほぼ負けており、再生時間が少々長いことぐらいしか利点はなくなってしまった。
最近はレビューも動画の方が強いのだが、YouTubeTWSのレビュー動画を検索すれと、ついこの前まで1万円以下のコスパ最強TWSは「Air Pro3」だったのが、「Soundcore P40i」に変わり、今は「Air Pro 4」になっているのがよくわかる。「コスパ最強の神製品」がここまでコロコロ変わって大安売りされるのを見ていると、何がいったい本当にコスパ最強なんだよ!と思ってしまうが、TWSはオーディオ製品というよりも、デジタルガジェットなので、機能の搭載や性能の向上がしやすく、どうしても後発の方が有利なのだ。3ヶ月後にまた状況が違う可能性も大いにある。

Liberty 4 ProをAir Pro 4と比較する

Air Pro 4の多機能さに対抗できる製品が、今回のLiberty 4 Proである。Liberty 4 Proは発売後、絶賛する声が多いが、Air Pro 4と比較してみると、音質やノイズキャンセル性能といった基本的な面では大きな差を感じない。一番の違いは先ほど挙げたように操作面だ。
定価ベースでは倍近いほどの価格差がある両製品であるため、単純に性能面だけで、Liberty 4 Proを選ぶ理由は薄い。Ankerというメーカーが非常に好きなら、買っていいと思うが、特に思い入れがなく、それなりの性能のTWSが欲しいだけという人なら、EarFun Air Pro 4を買えば、失敗はない。

Liberty 4 Proの基本性能について

アップデートが長い!

アプリを起動すると、イヤホン本体、ケースのアップデートが始まり、じゃLDACで接続するかーと思って、設定を変えると、なんとまたイヤホン本体のアップデートが始まった。すぐに使えないというのはストレスなので、今後の出荷版はアップデートを反映させて欲しいものだ。

音量調整がスワイプ操作でできるのは便利

安価な製品を出す他の中国系オーディオメーカーが真似しないのが、この操作形態だ。はじめてピンチとスワイプ操作のTWSを使ったが、スワイプで音量が調整できるのは便利だった。
ピンチははずしたりつけたりする時に誤操作するのではと心配したが、イヤホンをはずしている時は操作を無効にする設定のおかげで問題はなかった。

P40iと比べると、大きく変わって高音質

人気がある製品ということで、Soundcore P40iを購入しているのだが、P40iの音はレンジが狭く、ボーカルの帯域と低音強調によって、楽曲を楽しく聴ける感じではあったが、繊細さに欠ける音のため、アコースティックな曲を聴くのは厳しかった。感想を見ていると、P40iの音質を絶賛する人は多く、こういった音作りがオーディオマニアでない人に評価されるのがよくわかる。
無印Liberty 4は試聴のみで、その時の印象はP40iよりは断然に良かったのだが、無印とProの音質の違いについて語れるほどでないので、他のレビューを参照して欲しい。レビューを見ていると、無印は高音が刺さるという評が多いが、Proではそこまで刺さる高音ではない。
Liberty 4 Proはバランスがよくなり、P40iと比較すると、レンジが広くて大幅に分解能が上がり、アコースティックな楽曲もいい感じに聴けるようになった。もちろんアップテンポな曲もよく聴けることには変わらない。
ただ、仮想敵であるAir Pro 4と音質を比較すると、それほど差は感じなかった。Liberty 4 Proの方が少し高音が出てない感があったが、イコライザーをアコースティックにすると高音が強調され、くっきり感が増す。お勧めのイコライザー設定だ。ともあれ、価格差ほどの音質の差を期待しない方が良いのだが、Air Pro 4のコストパフォーマンスが異常ともいえる。
2万円以下の製品で、音質が良い製品というと、AVIOT TE-W1やTechnics EAH-AZ40M2があるが(どちらも試聴のみ)、TE-W1は取り出しにくく、音の分解能は高いが、高音の伸びがいまいち、EAH-AZ40M2は音質は良いもののLDACでの再生時間が3.5時間(おそらく実際には3時間ぐらいだろう)と短いという難点がある。最近出たAVIOT TE-V1Rは試聴したのだが、TE-W1と比べると高音の伸びがかなりよくなっており、長い再生時間、取り出しやすさと相まって、自分の評価は高いのだが、ネットを検索しても、あまり購入している人はいない。
2万円以下で音質を求めるのなら、SoundPEATS Capsule 3 Pro+(所有)もお勧めだ。自分は高音が好きなので、Capsule 3 Pro+をよく使っているのだが、ノイズキャンセルの性能も高く、LDACでの再生時間が3時間という欠点以外は満足度が高い。女性ボーカルをよく聴く人なら、Liberty 4 Proより、Capsule 3 Pro+の方がお勧めである。
※POCO F6とLDAC接続で音質評価をした

ノイズキャンセル性能

低音はかなりがっちり消してくれるので、新幹線の音などはかなり消えた。ノイキャン性能は「Liberty 4 Pro = capusle 3 Pro+ >> Air Pro 4」こんな感じ。ただ、Liberty 4 Proの方が人の声に対して強い印象はあったので、少しでも良いノイズキャンセル性能を求めるのなら、Liberty 4 Proだろう。音質重視か、ノイズキャンセル重視かで選択が変わる
ただ、これぐらいの価格帯の製品は、低音は消えるものの、人の声は通りやすい。電車の車内放送などは音量は下がるが、そこそこ聞こえてくる。人の声を更にノイズキャンセルしたいのなら、SONY / BOSE / Appleといったノイズキャンセル性能で定評があるメーカーの最上位モデルを買うべきだ。
※参考記事 【特集】BOSE最新ノイキャンイヤフォンなら新幹線内ですら静寂に。WF-1000XM5やAir Pods Proと比べても好成績 - PC Watch

外音取り込みは自然さ足りず

いかにもマイクを通した音という感じで自然さは薄い。外音取り込みの人工感はAnker製品全般に言えるようだ。

マイク性能はよくなってる?

紹介動画で無印やNCとの比較を見ると、マイクは騒音をうまく消しており、通話に向いてそう。

再生時間

まだ使いたてなのでよくわからないのが再生時間。公称ではノイズキャンセルONで7.5時間とあったが、短くなるLDAC接続時にどれぐらいになるか。
5分の充電で4時間再生できる短時間充電があるので、うまく運用すれば、短くても気にならないかも。

Air Pro 4 / Capsule 3 Pro+のケースと比較すると大きめ

接続安定性

POCO F6のLDAC接続だと、10分に一回ぐらい接続が途切れることがあった。

気になったポイント

イヤーピースが薄くてはずすとひっくり返る

イヤーピースが薄めのせいで、はずすとひっくり返ってしまう。ただ、ノズルが六角形ながら円形に近いので、他社のイヤーピースを使うことはできる。

ケースの操作

売りとなっているケースのディスプレイだが、LDAC接続だと、3Dオーディオが使えないため、ノイキャンのレベルを変えるぐらいしか使い道がない。しかもノイキャンレベルは常に一番強くするという運用をしている場合はケースの操作は使わなくなってしまう。
番役立つのはケースを開けた時に短く表示さえるバッテリー残量だった。またこの機能のせいで、ケースが結構大きくなっている。

わかりやすいバッテリー残量表示。なんと小数点二桁まで表示してくれる

便利そうなEasy Chat機能

装着者が話すと、自動的に音楽の音量が下がり、外音取り込みモードになるEasy Chatはかなり機敏に反応して、実用性が高そうだった。ただ、独り言でも、すぐ反応してしまうので、独り言が多い人は注意だ。

装着検出機能はOFFにできない

装着検出機能はついているのだが、無印やNCのように装着検出をOFFにする機能がアプリからなくなっている。装着検出をOFFにできなくなったのは、この機能に依存する他の機能があるからではないかと推測した。イヤホンをはずした時、操作を無効にする設定(これ自体はOFFにできる)や、片方のイヤホンをはずすと、音楽が止まって、自動的に外音取り込みになり、元に戻すと、最初の状態に戻るという機能があるのだ。

相変わらずマルチポイントはLDAC非対応

Ankerのマルチポイント対応は早かったのだが、他社と同じく、LDACだとマルチポイントが使えないという仕様がずっと続いている。Technics EAH-AZ40M2ならマルチポイントは3つ対応で、2つまでならLDACを使える。Ankerもこれぐらいはやって欲しかった。

今回新たについた機能は本当に求められている機能?

ケースのディスプレイや、気圧センサーを搭載した航空機向けのノイズキャンセル最適化などがハード面での変化なのだが、ケースはディスプレイ搭載によって、大きくなってしまうなどの難点を生み出すことになってしまった。気圧センサーも飛行機なんて年に一回乗るか乗らないかなんだから、必要性は薄い。
今回の機能追加で、確実に良さを感じるのは、タイトル通りスワイプ操作ぐらいなのだ。
1万円前後の価格帯の製品は、機能や高音質化が充実化して、競争が激しい。この価格帯での正面勝負を避けて、多機能な高額モデルにするのなら、小手先の多機能化よりも、音質やノイズキャンセルでもっと圧倒的な性能差を見せて欲しかったところだ。

まとめ

  • 音質は今までのAnkerのような派手なドンシャリではなく、微弱ドンシャリで、アコースティックな楽曲も合っている。逆に過去のAnkerの音が好きな人は要注意
  • ノイズキャンセルは低音に対してはかなり強く、電車の走行音に対してはよく効く。店内の人の声もそれなりに音量は下がる
  • ノイズキャンセルONでも再生時間はそこそこ長い。充電が早いので、再生時間の不満は少ない
  • Anker製品はサポートが良いという評判が多い。ワイヤレスイヤホンは充電ができなくなったり、紛失などのトラブルも多いので、24ヶ月(Anker公式会員になった場合)というサポートの強さに期待して買うのはあり。単純な故障に対しては、すぐ新品を送ってくれる。紛失は基本保証されないようだが、片方紛失して連絡したら保証外と言いつつ、送付してくれたという報告があった
  • ディープグリーンとスカイブルーのカラーは黒と白しかない他社と比べると、所有の満足感は高い
  • ケースの大きさが気になる人は無印やEarFun Air Pro 4にしよう
  • 10/10まで10%ポイントがつくが、それとクーポンを使っての実質1.6万円なら、お勧め度は高い。2万円だとちょっと悩むところ

AnkerはAppleを目指すのか

渋谷のANKERストアは、アップルストアの隣にできたが、ANKERはApple社のようなポジションを目指したいと感じる。今回のLiberty 4 Proのレビューは、YouTubeを中心にいわゆる案件ものがほとんどで絶賛ばかりで、まるでかつてのApple社の製品を思い出すような状況だった。
直近で出て、人気の高い多機能モデルのAir Pro 4との比較はユーザーとしては非常に気になると思うのだが、誰もしてなかった。これは案件ゆえの制限ではないか。
メーカー提供を受け、毎回最新機種を絶賛ばかりしているレビューばかりだと、受け手はどんどん不信になっていく。そんなことを感じた新製品の登場であった。

*1:TWSで一般的に全部入りと言われる機能として、ハイレゾCODEC対応、アクティブノイズキャンセル、マルチポイント接続は必須で、オプションとしてワイヤレス充電、装着検出が入る。Liberty 4はこれらの機能が全部入っていた