去年7月に発売された当初は5万円ほどしたDenon PerL Proが、ブラックフライデーセールでAmazonだけでなく、どこの店も2万円弱と大幅値下げをしている。音質が良いワイヤレスイヤホンが欲しかったので、つい手を出してしまったが、かなり音が良くて満足した。*1
このイヤホンは、医療技術を応用した聴覚検査で、耳がどの周波数に敏感なのか鈍感なのかをチェックし(自分が判断する必要はなく、自動で検査してくれる)、それに対応した音を作ってくれるという面白い製品なのだ。このパーソナライズが肝で、何もしてないニュートラルでは、のっぺりとした音が、パーソナライズにすると、音の輪郭がくっきりして、広がりが非常によくなる。
空間表現が素晴らしい
とにかく空間表現がすごい! エンヤやサウンドトラックのように空間表現を重視しているタイプの音楽には非常に合っている。PerL ProにはPerL無印にはない空間オーディオ機能があるが、これはかなり自然な音響効果で、音の広がりがよくなる。代わりに音の先鋭さはなくなる。PerL Proの音作りがそもそも空間オーディオ的なものを足していると感じるので、自分はかけなくてもいいと思ったが、評価する人も多い機能だ。
空間表現に特化しているため(音場型)、音の解像度や情報量、力感、量感(音像型)を重視する人は、EAH-AZ80など他機種を勧める。といっても、音の解像度が非常に低い訳ではないので、一般的にはこの音質で満足する人も多いだろう。
低音がすごい
あと驚いたのが、低音の表現。標準でも結構低音が出るのだが、アプリの低音調整機能を使うと更に低音の迫力が増す。イコライザーで低音を強くするとボーカルが沈み込んだりしてしまうが、他の帯域の印象を変えずに、低音だけを調整できて便利だ。
空間表現と低音が良いので、ライブ音源や映像には最適である。
有線イヤホンとは違う音
PerL Proでは有線イヤホンはいらなくなったという感想をよく見かけるが、逆に有線イヤホンと比較することで、このイヤホンの音の独特さを実感した。有線イヤホンの音は、元の音を重視した音作りなのだが、ワイヤレスイヤホンは一般的に加工前提で音作りをしており、特にこのPerL Proは付帯音がかなりついていて、音の響きが違う。有線イヤホンは素材の味を活かした味で、PerL Proは味付け重視という感じだ。
オーディオ好きなら、2chのピュアアンプとAVアンプの音作りの違いといえばわかるだろうか。AVアンプは部屋の音響をマイクで測定して、その部屋に合った音に変えるが、PerL Proは同様なことを個人の耳に対して行っているといえる。
ノズルは楕円形でちょっと独特な形
その割にイヤーピースは楕円でなく、真円だ。変な形なので、他社のイヤーピースを無理にいれると壊れやすそうではある。ケースの底は浅いので、背が低いイヤーピース推奨だ。背のせいでケースが閉まらなくなるイヤーピースも多いだろう。
ノイズキャンセルと外音取り込み
ノイズキャンセルは音楽を再生すれば、電車の中の音は気にならなくなるぐらい。めちゃくちゃ効く訳ではないが、おまけレベルでもなく、2024年のワイヤレスイヤホンとしては充分といえるレベルだ。
外音取り込みはソーシャルモードという名前だが、いかにも人工的な音になってしまう。またソーシャルモードにすると音量が下がるというちょっとお節介な仕様である。
通話に使うマイク性能もなかなか良かった。
再生時間
再生時間はaptX Lossless接続、音量40%で、45分ほどでバッテリーが10%減った。ここから計算すると7.5時間となるが、そこまで長いとは思えないものの。4~5時間は保つのではないか。5分の充電で1時間の再生可能な急速充電に対応しているので使い勝手は良いと思われる。
ケースからの取り出しやすさ
こんな感じで収納されているのだが、持つ部分が少ないため、ちょっと取り出しづらいところはある。
操作カスタマイズ
どの機能も割り振れるので、操作のカスタマイズ性は非常に高い。ただ、一般的なホールドでなく、タップ+ホールドなので、この操作だけはちょっと面倒。マルチポイントの切り替えは早く、再生したら切り替わるかどうかというのをON/OFFできるのも便利。aptXなのでLDAC採用機種に多い排他仕様ということもない。
注意点
ハイレゾCODECはaptX adaptive / Losslessのみ対応
標準的なハイレゾCODECのLDACには対応しておらず、aptX adaptive / Losslessにしか対応していない。aptX adaptiveが使えるスマホはSnapdragon 8以上のSoCを採用しているモデルに限られるため、Xperiaなどのハイエンドモデルに限られる。最高の音質を得るための環境が厳しい。自分は安くaptX adaptive / Losslessを使いたかったので、XiaomiのサブブランドPOCOから出ているF6を買った。
AACやaptXでも音が悪い訳ではないが、やはり真価は発揮できない。AACでも、PerL Proの空間表現の良さは感じられるのだが、aptX Losslessで聴くと、空間表現が更に良くなり、音の情報量や解像感も上がる。
なお、aptX Losslessに対応したFIIO BT11というBluetoothレシーバーがあり、これを使えば、最高音質が楽しめるが、残念なことに大人気で現在は品切れ中だ。
BT11 – FIIO Japan
aptX adaptiveだけでいいのなら、Creative BT-W5やSennheiser BTD600もある。BTD600は2022年の製品なので、新しいBT-W5の方がお勧めだ。
形状が独特
本体は結構大きく、自分は特に感じなかったが、装着感が悪い、長くつけられないという人もちらほらいる。
ソーシャルモード(外音取り込み)で音量が小さくなる
なんか余計なお世話な機能。あとノイズキャンセルをOFFにすると低音が弱くなる。
アプリの起動に時間がかかかる
最初にサーバーとの通信があり、イヤホンとの接続にも時間が結構かかる。なので、よく使う時はまずアプリを起動しておいてる。