普段から、読まずに感想を書くエアレビューはよくないよ!と思っているんだけど、トンデモ本系だと、今までよくある主張の繰り返しだからエアレビューってしたくなるよね! という訳で、この記事は「うーん、読んでも自分のためにならなさそうな本だなあ…」と思っている自分の中での認識整理であって、第三者に納得してもらおうという文章ではないよ!と前置きをしておくよ!(保険保険)
この手の近代文学はもっと読み継がれないと! 今の日本文学は幼稚になった!なんてのは、文芸界隈を見れば当然いっぱいある主張なので食傷気味。ところが、そこに「英語超重要!」というパーツが入ったから、さあ大変。英語での活動が多いIT系の人たちからすれば、技術ドキュメントなどでの日本語の地位の低下は日々実感しているから、そこにすっぽりはまった。導入部の海外在住の体験記は経験者を共感させる下地作りには最適だったようだ。
この本すごい!と言ってる人たちは、英語超重要!という主張に主眼が置かれていて、別に近代文学を読ませる教育をすべき!という主張にはあまり主眼を置いてないのではないか? 質問してみたいんだけど、別に日本の近代文学がどうなろうとあまり心配してないでしょ? 別にわざわざ心配しなくても、英語の重要性は認識されており、英語教育の必要性は自然に高まっていくんだろうから、近代文学を読ませる教育が必要!なんてアレげな意見に与しなくてもいいと思うのだが。
文芸評論家である仲俣氏は、この本を言語ナショナリズムだと痛烈に批判している。そりゃそうだろう。だって、文芸界隈だとよく見かけた光景なんだもの。
「読んだ人たちの感想」がいっぱい出たんだし、梅田氏はそれに対して反応したほうが良いと思うのだが、難しいよなあ…。今まで自分が築き上げた信頼ポイントをどう扱うかというのは、当然個人の問題だし。
近代文学危機論自体は陳腐なのだが、そこを日本語危機論というパッケージングにして間口を広め、英語圏での生活体験や英語が主要言語になっているというパーツによって、海外在住経験のあるIT技術系との妙な出会いが起きて、すごい化学反応が起きた!というのが、自分の中で大変興味深かったので、思わずまとめてみた。
基本的に非教育分野の人が「教育で○○すべし」という教育論系の書籍はトンデモまじっていること多いんで、まず読まない。書籍だけではなく、そういう教育論をやたらとぶつ人は、大体ロクでもないんで、いいフィルタリングになってる。教育論って、別に専門知識なくても、誰でも何か言えちゃう分野だから、そういう人が混じりやすいんだろうけど。
この本は「読まなくていい」の箱に入れたので、この本の内容を支持する人は僕を「この本を読まずに批判するバカ」「本を読まずに内容がわかるエスパー」という箱にいれておいてください。
※今回読んだ記事
水村美苗「日本語が亡びるとき」は、すべての日本人がいま読むべき本だと思う。 - My Life Between Silicon Valley and Japan
梅田望夫「紹介・水村美苗『日本語が亡びるとき』」の補足説明を試みる。
水村美苗氏 英語の覇権憂う書 : 出版トピック : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
水村美苗『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』を読む。 - 【海難記】 Wrecked on the Sea
「日本語が亡びるとき」なんか読む暇があったら「あたし彼女」でも読んどけ - Thsc
未来志向の懐古趣味「日本語が亡びるとき」。 - Out of Order.
バベルの塔の奴隷たち。 - Out of Order.
例の本(書評というか感想文) - 思索の海
※追記:そういう点では、一定の支持者を得て、アジテーション、あるいは何らかのアジテーションに利用される「知識人」の言説としては成功するような気がします(僕の中では内田樹氏と同じ箱に入れたい感じ)。ちょうどこの本をはてなで最初に賞賛した方の発言が多くの批判や反発を受けながらもAmazonの在庫切れという事態を引き起こしたのと似て。
この注釈が面白かったので引用。「内田樹氏と同じ箱」ってひどい評価だこと(笑)。
※「英語教育超重要!」を「英語超重要!」に訂正