『日本語が亡びるとき』を読まずに騒動だけ見た感想 - ARTIFACT@ハテナ系
への反応で、気になったものがあったので。
空気読み国家の国民は「日本語が亡びるとき」をやっぱり読んでおけ - 狐の王国
どうだこれは。文部省は国民の空気を読んでカリキュラムの検討をしてる、空気が教育現場への圧力になる、そういうことではないか。
ということはだよ。そういう教育論をやたらとぶつ人は、大体ロクでもないとか言ってる場合じゃないってことだよ。
だって文科省は空気読んじゃうんだよ? 声が大きい方が空気作っちゃうに決まってるじゃん。
トンデモだろうがなんだろうが声が大きかったらそれが空気になって文科省へいく。鈴木先生のような専門家が「ちょっと待ってくれ」と言わざるを得なくなる。
とにかく教育は誰でも経験してるから簡単に語りがちだなんていって遠慮してる場合じゃない。そんな思慮深さを持ってない「トンデモ」ばかりが跋扈するハメになる。
自分の記事が、「素人は遠慮して教育論を語らないほうがいい」というような発言だと思われたらしいのだが、どこをどう読んで「語らないほうがいい」と読めたのか? 「素人は教育論を簡単に語りがちである」というのは分析であり、「素人は教育論を語ることを遠慮したほうがいい」という行動の自制ではない。
自分の意見をあらためて言えば、「非専門家の安易な教育論には価値がないと考えているので、自分としては耳を傾ける必要を感じていない」「安易な教育論を語る人間を自分は評価しない」というものだ。教育論を語りたい人にはどんどん語って欲しい。個人のフィルタリングが簡単にできるので、自分としては助かるから。
また、明確に書いてはいないが、延長線上にある考えとしては「非専門家である自分は安易な教育論をしない」であり、「安易な教育論は批判すればいい」(前回の記事では安易な教育論への警戒を呼びかけている)ということになる。
非専門家の安易な教育論を文科省への余計な圧力にさせないために、安易な教育論は実際に有効でないという批判は必要であっても、自分自身が安易な教育論を語ることは必要ではないだろう。トンデモを批判する人間が、新たなトンデモを生む可能性はある訳だから。でも、ここで「対案のない批判は無効」ロジックを使われるとちょっと面倒そうだけど。
トンデモ教育論をはびこらせないために、『日本語が亡びるとき』を読んできちんと批判しようという意図があるのかも知れないけど、既にきちんと読んでいる人たちによる批判がある訳で、それほど興味のない人たちまで読まなくてもいいと考える。あと、この手の極論って、賛否両論含めて注目されること自体が重要なんだから、その注目されることに誰もが加担する必要はないんだし。
「文科省にトンデモが作った空気を読ませるな!」という提案には賛同する。しかし、結論は同じなのに、なぜか、その結論を阻害する意見であるかのように扱われてしまっているのには困惑したので、この記事を書いた。
毎度思うのだが、「このような言動をしている人を評価しない」という価値観の表明が、なんで言動の禁止に読み取られるのだろうか?
価値観の表明が、なぜ強要や強制に見えるのか問題 - ARTIFACT@ハテナ系
とかいろいろ書いていたんだけど、後から書かれた記事を見て納得した。
英語の世紀でガラパゴスを生きる日本 - 狐の王国
この本を簡単にこれこれこうだから価値が無い、というようなことを書いている記事をいくつか見つけたのだが、そういう記事はたぶん信用しない方がいいだろう。
あー、前の記事はそういう「価値がない」と言っている記事だったから、否定材料に使った訳ね…。納得したけど、なんだかなあ。
素人の教育談義については、成松哲さんが詳しく書いている。
三十路でアニメ: ボクにも語れた教育論
結局、今の学校の現状や「公」教育のあり方、お上の教育政策など、まるで知りもしないまま、めいめいの美しい(と信じ込んでいる)想い出と報道(の中でも自分に都合のいいもの)だけを根拠に私論をぶっているだけ。こんなもの、夜な夜な飲み屋の酔客どもがプロ野球やサッカーナショナルチームの采配を云々するのと同じ。あれも、ガキのころの草野球や体育の授業のサッカーの経験とスポーツ新聞の記事をもとに、プロフェッショナルの仕事に対して知った風な口を利いているだけなんだから。
あと、年寄りの語る教育論は「今の若いモンは!」の置き換え語。イマドキの若者に不満があるから、その原因を教育に求めたがる。「オレらのころの学校はこうだったのに、今はああだから、若者がダメになっている。オレの生き方を見習え」って言いたいんだろう。そして、もうひとり、今現在、自分が不幸せだと思っている人も語りがち。今の不幸の原因を教育に求め、批判することで自分を慰めたいんだろう。教育オナニーだ。
- 作者: 成松哲
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