岩崎宏美・紙ジャケCD×22枚、ヒットの理由〜限定BOXで売らなかったのはなぜ?:NBonline(日経ビジネス オンライン)
去年8月と古い記事だけど、最近見つけたので。メインの話題も面白いが特にアルバムCDの売り上げの数字が興味深かった。
森谷 旧譜の再販の場合、ひとくちに言って1枚につき1000枚が「まあ、よかったね」と言われる目安なんです。この企画の場合も、だいたいそのくらいでしたね。
でも、例えば堅く見て1000枚として、そうすると全22枚で2万2000枚じゃないですか。今は、2万枚も売るなんていうのはものすごく大変なことなんです。1アーティストで1作品のアルバムで2万枚売れる人なんて、社内でも数えるほどしかいませんから。業界を見回しても同じことが言えますね。
本当のビッグネーム、音楽好きなら誰でも知っているぐらいの名前じゃないと2万枚は売れません。今は本当に、そのぐらい市場が悪くなっています。ですから、岩崎宏美さんの復刻版を合わせて2万枚、という(目標値)は、すごくいい数字なんですよね。
―― 先ほど、「2万枚アルバムを売るのが大変だ」とうかがいました。CDが売れない売れないと耳にしつつも、アイドルポップス全盛期に学生時代を過ごした私には、この数字はいささか衝撃なんですけれど。
森谷 オリコンの枚数を見ていきますと、もう如実に分かると思います。上の方しか万単位にいってないですから。
―― あ、2万枚というのは、もしかして発売最初の週に売れるのが2万枚、という意味でしたか。
会社として期待する枚数と「マニアの細道」
いやいや、長く見れば1年でもいいんですけど、やっぱり事業として決算をする、それまでの間での数字です。今、何か背景がないものは売り伸びないですから。
―― 背景というと、タイアップとか?
そういうものがない限りは、イニシャルの枚数からどんどん売れていくというのはあまりないので、やっぱり2万枚売れるものは初回から1万枚ぐらいは売れていますね。
CDアルバムが2万枚出るクラスのミュージシャンは数えるほどしかいないらしい。
―― 目安として、どうでしょう。業界の常識、というところで、旧譜と新譜では、販売枚数の最低ラインはどのくらい違いますか。
ニッチなものは、やっぱり1000が最低ラインというのはありますね。
―― 新譜だと?
新譜だと1000じゃ話にならないとは思いますね。やっぱり3000ぐらいじゃないですかね。そのジャンルの狭いマーケットで確実なコアなファンに売るものとして、3000ぐらい売れればまあ、売れたかなという、最低限の達成感はあるんじゃないですかね。対費用にして黒字か赤字かは別にして。例えば沖縄の音楽をやっているアーティストがいたとして、3000から5000いけば、わりと成功、みたいな。もちろんそれはアーティストによってもお金の掛け方によっても全然違うんですけれども。
―― 3000枚というと、どのくらいの存在感ですか。
主要なレコード店には、ある程度目立つように置いてある、という感じです。
―― 主要というのは、ツタヤさんとかを考えていいんですか。
う〜ん、ツタヤさんは郊外のお店ではほとんどニッチなものは入らないので、やっぱりタワー(レコード)さんとか、HMVさんとか、新星堂さんとか、都市のターミナルにある大きなお店、山野(楽器)さんとか。
―― 本と同じ感覚ですね。初版は3000から5000がミニマムのイニシャルで、「売れた!」とは言えないんだけど、まあ、ほっとするぐらいの数字。
そうですね。
―― 「誠実に作ると、5000ぐらいは何とか動くんだよね」という言い方をしたりもします。
そんな感じですかね、近いものがありますね。
Sound Horizonのアルバム一万枚ぐらい出たという話を聞いたことがあるけど(確証ある話ではない)、なるほど一万枚も出たら、充分注目に値されるんだなあというのがわかった。声優系音楽が元気がいいのは、このぐらいの規模が結構出るからか。
Amazonの話題も興味深かったのでメモ。
―― やっぱりそうですか。そうなると、この手の企画性の高いものは業界誌も「売れる」とは思いにくいでしょうから、お店に入らない可能性が…
どうしても皆さん「Amazon」で買うということになりがちです。
―― というか、こういった企画モノを置いてくれそうなレコード屋さんは、そうそう身近にないですよね。
データとして提供できないのが申し訳ないんですけど、このような気合いが入った紙ジャケ復刻版は、Amazonさんが真っ先に「うちで展開しませんか」と言ってくる企画ですよ。
―― Amazonで広告すれば売れますよ、と。
ただし、じゃあ「個性派はとにかくAmazonで勝負」かというと、それも違います。ニッチなアイテムの中でも、過去の評価が定まっているものは、Amazonの威力が存分に使えるんですけど、もう一方で、評価がまだされていない、これから初めて世に出すものというのは、考えてみれば当たり前ですけれどAmazonでは売れないんですよね。
別の方法でプロモーションをして、それを皆さんに知ってもらわないと、いくら5000枚とか、1000枚でいいといっても、やっぱり売れないんです。「Amazonだけ」ではどうにもならない。
―― Amazonは、新しいものを世に広めるためのツールにはならないんだ。
そうなんです。でも、こういうすでに知名度のある方の復刻などには非常にやりやすいですね。