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日本の近代史入門書としてお勧めの『新版 昭和史』がセール中(10/30まで)

『新版 昭和史』で基本的な人物名や事件を知ろう

戦後80年ということもあり、今年は過去の日本の戦争についてのテレビ番組が多く放映されたり、書籍が出ていたが、なぜ日本が戦争に突入したのかをわかりやすく説明した本が意外とない。
日本の戦争というと、対英米を戦った太平洋戦争中心で、真珠湾攻撃をきっかけに日本は突然戦争に突入したという「真珠湾史観」とでも言うような考えをよく見かけるが、当然これは勘違いで、最低でも昭和6年(1931年)に起きた満州事変から事態を見る必要がある。その後、日中戦争、太平洋戦争にいたるのだが、昭和の日本は敗戦する昭和20年までずっと戦時中であったといえる。
通史で歴史が書かれた本といえば歴史教科書があるが、教科書というのは得てして頭に入りにくいものだ。この本は授業形式で行われ、話し言葉で書かれているため、理解しやすく、人物や事件が非常に多い昭和史の話をコンパクトにまとめている。最近はYouTubeのような動画で歴史を知る人も多いようだが、YouTubeは偏見にまみれた歴史情報ばかりで、その中からまともな動画を発掘する方が大変で、きちんと精査された本を読んだ方が効率が良い。
このように昭和史の概略がわかる本で、多数の人物名や事件の名前が頭に入ると、様々な本を読むための基礎となってくれる。ここから、戦前の社会や政党政治、陸軍軍人の思想など、自分の興味のある話題の本について手を出すのがお勧めだ。
※セールは10/30まで『新版 昭和史』の外伝的な本で、昭和の文化史に触れている。『昭和史』完結で、昭和史を世界の歴史の中に位置づける。
以前書いたこの記事もずいぶん前なのだが、ここで紹介した本がセール対象になっているので、あらためて紹介したい。

戦争を国民はどう受け止めたのか~銃後の日本を知る~

日中戦争を当時の国民がどう受け止めたのかという興味があったが、それに関して答えてくれたのが下記の本だった。

日中戦争が当時の人々にとっては格差をなくす「革命」であり、「希望は、戦争。」*1だったのを、史料を駆使して解説する。当時の歴史的事件など基本的な知識があった方が読みやすいが、現代と通じる話が多いため、当時の歴史の知識があまりなくても、わかりやすい。知的好奇心を満足させてくれるだろう。戦前の日本がアメリカ化(大衆消費社会)、格差社会、大衆民主主義だったことを描く。新書ということもあり、歴史の知識がなくても読みやすい本。タイトル通りの本なのだが、井上寿一氏の本は、政治よりも国民がどう考えていたか、どう戦争を受け止めていたかを説明する本が多くて、お勧めだ。日露戦争以降、亡くなった兵士を地方がどのように顕彰してきたかを、膨大な資料で見せる。日本国民が戦死者とどう対峙してきたか、そして戦死者がどのように国家動員に使われてきたかがよくわかる。一ノ瀬 俊也氏は『戦艦大和講義: 私たちにとって太平洋戦争とは何か』が面白いのだが、電子化されていなくて残念だ。以前Twitterで書いた評。

お勧め本

ナチスドイツがどのように躍進したかがわかる初心者向けの名著が67%ポイント還元で実質約300円という安さ。昭和初期はテロによる凶行が、軍人の権力強化に繋がるのだが、それについて詳しく解説していく。五・一五事件に至るまでに未遂に終わったクーデターがあり、実行者たちががきちんと処罰されなかっために五・一五事件が起きてしまうというのがよくわかる。米軍報告書から、日本軍と日本兵を見る。日本の政府や国民がどのような理屈を持って「戦争に訴えねばならない」に至るかを解説。ただ授業形式で平易な『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』の続きのつもりで読むと、意外と難しく、基本的な事件の知識があってから読んだ方がいい。史書ではないのだが、歴史が前提にあるという意味で非常に面白く、234円と安いので。1960年にチェコスロバキアのブラハのソビエト学校に通っていた当時の3人の友達を探し出し、30年後に再会する。東西冷戦終結後の激動に、東欧の個人がどのように翻弄されたのかがよくわかる。東西冷戦時代のエピソードが多い『MASTERキートン』好きは必読だ。

気になる本

以下は未読だが、高評価の本を。

イザベラ・バード

複数出ていて、平凡社ライブラリー版が安いので買ったのだが、高梨健吉翻訳版が一番最初に出たようで、この翻訳版は京都大学名誉教授でイザベラ・バード研究の第一人者の金坂清則氏によると、翻訳の正確性が低いという。ベストは金坂清則氏の翻訳による『完訳 日本奥地紀行 』のようで、これは電子化されているのだが、金坂清則氏の『イザベラ・バードと日本の旅』は電子化されてないようで残念。イザベラ・バードと日本の旅はなぜ誤解されてきたのか|特集|北海道マガジン「カイ」
漫画の『ふしぎの国のバード 』も1~3巻が341円で44% OFFのクーポンが出ていてセール中だ。

*1:後書きでも赤木智弘氏の言説に触れられている