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音質の評価は音の好みによって左右されるという当たり前の話

絶賛されているワイヤレスイヤホンEAH-AZ100の音が好みでなかった

今年1月にTechnicsがワイヤレスイヤホンの新製品EAH-AZ100を発表し、先代のEAH-AZ80は試聴で好印象だったので、新製品ならより高音質で高性能になっているだろうと思い、購入の予約をした。試聴してみると、EAH-AZ100はEAH-AZ80より、音の情報量などは上がっているが、どうも高音のクリアさに欠けていて、こもっている印象を感じた。Bluetooth CODECの接続の問題などもあったかも知れないと思い、またイコライザーで調整すればAZ80に近付くという情報があったので、改めて試聴したのだが、デフォルトの設定よりは好印象なものの、やはりEAH-AZ80と音の傾向が違っており、特に高音はやはりこもっていると感じてしまった。EAH-AZ80とAZ100が同じ傾向の音だといっているレビューは見かけたが、これが同じ傾向の音だという評をする人はオーディオの音質に関して、とても信用できない。EAH-AZ80は初めて聴いた時から、これは良い音だ!と感じたのだが、EAH-AZ100はどうにも音が良いという印象を持てず、結局予約をやめてしまった。
EAH-AZ100はEAH-AZ80で不満があったと言われている低音が強化されているのだが、そのせいか高音に関しては、AZ80のようなきらびやな高音はAZ100ではなくなってしまった。EAH-AZ100の高音に対して、同様の感想を持つ人は試聴した人で見かけるのだが、そもそも不満を感じた人は購入をしないので、その感想はそれほど可視化されない。

高価な製品だからといって、自分好みの音とは限らない

基本的にオーディオ製品は価格が高くなればなるほど音が良いとされる。しかし、このように 上位機種でも、好みの音でないことはある。所有している機器でも、ワイヤレスイヤホンのDENON PerL Proは発売時5万円近い高価な製品だが、これらよりずいぶん安価なSoundpeats Capsule 3 Pro+やSoundcore Liberty 4 Proと比べると、高音はこもって感じる。
スピーカーでも、Polk Audioで似たような経験があった。Palk Audioのラインナップは、上からRシリーズ、ESシリーズ、MXT シリーズで、最初に出たのはRシリーズで、初めて試聴した時はピンと来なかった。特にライバルのDALI Oberonシリーズと比べると高音のクリアさに欠けている印象があったのだ。その後 ESシリーズという新シリーズが出たのだが、このシリーズはDALIと似たクリアな高音を感じて印象が良かった。今でもたまに比較試聴をするのだが、やはりRシリーズよりもESシリーズの方が好みだ。

好きな高音

自分は「クリアな高音」「ヌケがいい高音」と言われるタイプの高音が好きで、「こもって感じる」というのが自分が良いとは思わない高音だ。こう書くと、誰だってクリアな高音は好きでこもった高音は嫌いだろうと思うだろうが、おそらくこの「こもって」と感じる閾値が人によって違うのだ。今使っているスピーカーのB&W 706S2は他社のスピーカーと比べて段違いに高音のクリアさを感じて、購入したのだが、B&Wの高音はキンキンしていて耳に痛いという評もある。これはこの閾値の違いだろう。
Technics EAH-AZ100や、DENON PerL Pro、Polk AudioのRシリーズ に共通しているのが、音の情報量や密度は高いとは感じるのだが、高音がどうしてもこもったように聴こえてしまう点だ。特にイヤホンの場合、中華メーカーのイヤホンは、クリアな高音と迫力のある低音が両立して、かつ音の情報量もある製品が多いため、それらと比較をしてしまう。中華系以外のメーカーのイヤホンだと、こうしたクリアな高音が出ない製品も多いので、各メーカーの音作りの問題なのだろう。

スピーカーの周波数特性から見る高音

しけもく氏は安価なスピーカーを多数レビューしており、非常に参考になるのだが、中でも3-6万円のスピーカーを比較した動画の中にあった周波数特性は興味深かった。高音が好みのDALI Oberon 1は、高音の帯域がかなり盛られている。Polk Audio ES15もDALIほどでないが、少々高音を持ち上げている。フラット気味なDebut B5.2を試聴したことはあるが、音の密度があり、良いと思ったものの、高音はそれほど好みでないと思った記憶がある。
ということは、高音の帯域が盛られたものが好みかと思いきや、所有しているMONITOR AUDIO Bronze 50-6Gも高音は好みなのだが、Oberon 1やES15ほど高音は持ち上げられていない。持ち上げていなくてもクリアさを感じて良く思う時もあるようだ。


「モニター」とは?

また、悩むのが「モニタースピーカー」などの「モニター的」という表現だ。モニタースピーカーやモニターヘッドホンは音楽制作で正確な音を聴くための機材として使われており、そのような音を「モニター的」と表現して、リスニング向きではない、硬い音だと言われることが多い。
B&Wアビー・ロード・スタジオに使われていることもあり、モニタースピーカーと言われることもあり、音の解像度は非常に高くて、音の情報量は多い。しかし、先に述べたように、高音にクセを感じる人も多いようで、自分も、どちらかというと正確な音というより、あえて耳に心地よく感じる高音作りをしているのではと感じる。上で話題に出したMONITOR AUDIO Bronze 50-6Gもモニター的と評されるのを見かける。
EAH-AZ80 とEAH-AZ100の比較でも、どちらもモニター的な音という人がいて、どっちがモニター的なんだよ!と悩んでしまう。自分の印象では、EAH-AZ80は音を作っているので、AZ100の方がモニター的なのではと思う。

良い音質とは?

音の情報量の多さや密度が多い機器は「音質が良い」と表現することに誰にも意義はないだろう。
問題は高音や低音に対する好みだ。高音をクリアに出そうとすると、高音は強調気味になることがあり、高音が苦手な人はキンキンした耳に痛い高音というし、自分のような好みの人にとっては評価が高くなる。低音も、とにかく迫力重視の人は低音の情報量よりも量重視になって、ボンボンした低音が好みになるし(よく車のサブウーファーから、すごい低音が出てることがあるが、あれが「ボンボンした低音だ)、遅延がなく、キレがいい低音が好みの場合は低音の量よりも質を重視するだろう。こうした好みによって、音質の評価が変わってくる。
丁寧なレビュアーなら、自分の好みを開示してくれているが、そうでない人も多い。他人の音質評価について、このように好みを把握しておくと、理解がしやすくなるだろう。
先に挙げた「モニター的」も、どの機種をモニター的と表現するかで、その人の音の評価基準がわかりやすくなるので、レビューを調べる時の重要な指標になる。
オーディオに限らないが、自分が良いと思った対象を高く評価しているレビュアーは、自分の好みに近い可能性が高いので、参考になりやすい。いろいろなイヤホンやスピーカーを試聴してみて、自分が良いと感じる音の傾向を把握しておこう。