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思春期のオタクが背伸びするための小説―ライトノベルの読者年齢―

思春期にかかりやすい病「中二病」のはてなキーワードの解説では背伸びするためのアイテムとして「洋楽」が挙げられているけど、これをオタク方面で考えてみる。
自分が考えている思春期のオタク背伸びアイテムとして今一番わかりやすいのは『ファウスト』だ。なかでも西尾維新氏の小説はかなりその背伸びアイテム感がある。たとえば『キノの旅』を読んでいた中学生が、「ああ、こんなのは子供っぽい!」と思って次のステージに行く時に手に取るのが、西尾維新氏の小説なんではないかなーということ。
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20050228#otakuhis

そして『エヴァ』で一番ニーズがあったのは従来のアニメでは見かけないタイプの心理描写(思春期の心理を、もっと端的にいえば魂の童貞の心理を切実に描いた)だったのに、後続したアニメはあくまで演出技法などの影響に留まり、新しく生まれたニーズの受け皿とならなかった。

上の自分のコラムでも書いたけど、その受け皿になったのはエロゲーだった。それがライトノベルに移行しつつあるのが現在だ。そういった受け手の変容のニーズに応えたのが、リーフの『雫』や『痕』である。注意したいのが、これは時間軸的に『エヴァ』の影響ではない。あくまで同時期の発生。

ここで書いたのは、「過剰な自意識の受け皿」としての作品のことだったんだけど、「ライトノベル」と言うとあまりに広過ぎて、どの種類のライトノベルが受け皿になったのか理解しにくい文章になってしまっていた。この文章はその補足でもある。
現在のライトノベルというのは、おおまかにわけると10代向けのものと、アニメ・漫画へのリテラシーがかなり発達した20代以上向けのものにわけられると考えている。『キノの旅』の読者層はかなり若いだろうし、大きなヒットとなっているがメディア上で取り上げられにくいタイプのライトノベルの支持層は10代が多いだろう。『フルメタル・パニック』とか。
面白いのが雑誌の読者年齢層。『ザ・スニーカー』の読者平均年齢は20代後半だが、ファウストは20を切っているという。ここからはデータがある訳ではなく、あくまで印象論なのだが、電撃やスニーカーなど既存のレーベルは、中学生と大学生以上をフォローしていて、『ファウスト』は中二病が発生しやすい高校生辺りに支持されているのではないだろうか。
キノの旅』は中学生向けで、『ドクロちゃん』などのようなアニメ・漫画のお約束を逆手にとったものや、井上喜久子の声が癒しになるようなハーレム物語の世界観のものは20代以上向け。その中間に『ファウスト』は位置していると考えられる。
ドラえもん』のように子供向け作品を大人として楽しむ人もいるけど、そういう読み方をするためには、一定の年齢にならないと無理で、高校生ぐらいの年齢ではそこまで枯れるのは難しいから、『キノの旅』から西尾維新作品みたいな流れができるんじゃないかなあ。こういった思春期の背伸びアイテムは、すごく近親憎悪が働きやすくて、「青臭い」とか極端に嫌う人も出やすいんだろう。
他の方向で例えを出すと、ニンテンドーDSに子供っぽさを感じて、PSPを素直にかっこいいと感じるセンス。PSPの一番のユーザーは10代だそうで。これが30近くになったりすると、PSPの「かっこいいですよー」オーラを過剰に感じて、DSのほうがいいよねとなったりする。

http://d.hatena.ne.jp/adramine/20050318#1111112968
田中芳樹氏の小説が背伸びアイテムだという指摘。以前、田中芳樹氏の小説はライトノベルか?という話題になった時に、この人の小説を読んで政治を語り始める思春期の方々がいるのでライトノベル!としたことアリ。僕は『創竜伝』で「自虐史観」という言葉を覚えました。*1
ファウストもそうだけど、小説においてはライトノベルと呼ばれないジャンルのほうが背伸びアイテムが多い気がしてきた。ライトノベル以外のレーベルから出ていると子供向け感が出てしまうから、そうなるんだろうけど。講談社ノベルの場合、あの分厚さが他と違う感じを受けるという指摘があった。
http://d.hatena.ne.jp/kourick/20050318/1111135903
西尾維新作品の先には「森博嗣」と「京極夏彦」が待っていて、そこが一つの到達点。その先は、夢野久作などのマイナー作品を探し出す…という指摘。
そういえば、マイナー作品にアイテンディティを見いだすのも中二病なのかなあ。何でも中二病に放り込むのはよくない気もするが(笑)。

*1:もちろん時系列が逆。そんな言葉ができる前に読んで呆れていた