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PS5とゲーミングPCどちらがいいのか問題

PS5値上げや12万円のPS5Proのニュースで、この価格ならゲーミングPCを買ったほうがいいという話題が盛り上がっている。単純に価格面での比較が多いが、そもそもコンソールゲーム機とPCでは環境面でいろいろな事情が違う。それらについて触れているものをあまり見かけないので、記事を書いてみた。
筆者は、PS4 Proは買ったが、PS5をヨドバシカメラの抽選に当たって運良く買えたものの、とある事情で手放し*1、その後は入手困難なせいで買うタイミングを逃してしまい、主にテレビにPCを繋げて遊んでいる立場の人間だ。

繋げるのはテレビかPCモニターか

結論からいうと、テレビに繋げるのならPS5やXbox、PCモニターを使いたいのならゲーミングPCである。これはテレビのHDMI-CEC連携の恩恵を受けられるのが、コンソールゲーム機だけだからだ。PCではHDMI-CEC連携ができないので、テレビにPCを繋げても、利点がない。逆にコンソールゲーム機をPCモニターに繋げようとすると、今どきのゲーム機は音声出力はHDMIなので良い音響の導入が面倒になってしまうという問題がある。
HDMI-CEC連携とは、テレビやAV機器の連動ができる規格で、電源のON/OFFや音声のボリューム変更、FireTVやBDプレイヤーなどの機器の操作をオリジナル機器のリモコンでなく、テレビのリモコンでできるようになる。ゲーム機なら、ゲーム機の電源を入れるだけで、テレビの入力はゲーム機になり、サウンドバーなどの音響機器も自動的に電源が入り、音量調整もテレビのリモコンで可能になる。ここからレジューム機能ですぐゲームが遊べるのだから、ゲームのプレイ環境としては快適だ。同様のことをPCで再現するのは難しい。

PCの利点

MODの対応などはよく言われているが、ここでは周辺環境について注目したい。

SONYが出しているゲームがPCに移植されるようになり、数年待てば、PCで遊べるようになった

利点とはちょっと違うが、SONYがこのようなスタンスになったことで、PCに対するPSの優位性がかなり崩れてしまった。PSでしか遊べない独占タイトルは『グランツーリスモ』ぐらいとなってきている。
【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】ソニーはなぜPC向けゲーム事業を強化するのか?2025年にはPCおよびモバイル向けタイトル数が半分弱に - PC Watch

没入感が高いウルトラワイドモニターでプレイできる

以前はPCはビデオカードの性能を4Kほど求められないWQHDで遊べるという利点があったがPS5でも対応した。しかし、ウルトラワイドモニターへの対応は望めないだろう。
テレビのアスペクト比は16:9だが、PCでは、21:9や32:9といったウルトラワイドモニターがあり、最近のゲームではウルトラワイドモニターに対応しているのが標準である。SONYが出しているゲームがウルトラワイドモニターで遊べるのはPCだけだ。
【西川善司のグラフィックスMANIAC】嗚呼すばらしき32:9の世界。「ウルトラワイドゲーミングモニター」のススメ(1) - PC Watch

SONYのゲームがXboxコントローラーで遊べる

PS専用だったゲームが、PCの標準ゲームコントローラーであるXboxコントローラーで遊べるというのは、Xboxコントローラーに慣れている身としては非常に嬉しい。ずっとPSシリーズで遊んでいていた人にとっては利点でないだろうが、左のアナログスティックが普段の親指の位置に近いXboxコントローラーは使いやすいのである!

PCのメモリを多く搭載していると、リトライのロードはキャッシュで一瞬

PS5のロードの速さはよく言われるが、リトライのようにすでに読み込んだデータで、PCのメモリが多ければ(ゲームによるだろうが32GB以上あればいい?)、キャッシュが効いて一瞬でロードできる。自分のPCはメモリを48GBにしているのだが、ゲームのリトライが一瞬だったのは感動ものだった。
なお、PS5の方がPCよりロードが圧倒的に早いと言われているが、自分が調べた範囲では、起動が早いのは『原神』のみだった。『GOD OF WAR』のようにPCの方が圧倒的に早いタイトルもある。
『ゴッド・オブ・ウォー』グラフィックとロード時間、fps比較 (PC - PS5 - PS4) : ゲーム動画保管庫 GVV (動画の反応)

PCの欠点

マルチモニター環境で好きなモニターに表示したくても、マルチモニターにしっかり対応しているゲームは少ない

これは常に困っていて、フロム・ソフトウェアはマルチモニターにまともに対応しておらず、メインモニターにしか表示ができない。UBIなどはちゃんと表示するモニターを選べるのだが。

コンソールのようなレジュームはないので、ゲームを再開するのに手間がかかる

コンソールゲーム機というのは始めるまでの手間が少ない。全体で見ると、PCはPS5より高度なグラフィックやウルトラワイドモニターなど、ゲームの体験をリッチにさせる要素が多いが、コンソールゲーム機はHDCMI-CEC連携などゲームを始めるまでのハードルを下げてくれる要素が多い。

PCとPS5のオーディオについて

PCは一人で使うことが前提なので、イヤホンやヘッドホンを使う、デスクトップオーディオのような環境は構築しやすい。逆にPS5はテレビに繋げることが前提なので、テレビを通したオーディオ環境が理想だ。特にサラウンド環境に関しては、HDMI接続が必要になってくる。PS5でイヤホンやヘッドホンで高音質化をしたい場合は、ゲーム機に対応したヘッドホンアンプ内蔵USB-DACが必要となる。
PS5でのオーディオ強化については以前書いた記事を参照して欲しい。
ゲーム機用のテレビを安く選ぶのなら、対応タイトルが少ない4K120pの入力にこだわらなくていい - ARTIFACT@はてブロ

*1:M2の堀井氏がPS5を買えなかったとTwitterで書いていたので、譲った

5000円から1万円台のワイヤレスイヤホン選び(2024年10月期)―EarFun Air Pro 4 / Soundpeats Capsule 3 Pro + / Anker Soundcore P40i / QCY Melobuds Pro / Xiaomi Redmi Buds 5 Proを比較する


今年登場したワイヤレスイヤホンで、5000円から1万円台には注目を集めた製品が多かった。どれが良いのか悩む人も多いと思うが、つい気になってほとんどの製品をうっかり買ってしまったので、比較をしてみたい。
中華メーカーの製品は、セールで安くなることが多く、価格性能比は基本的にセール価格で考えている。
※再生機器はPOCO F6でLDACで接続、音楽の再生にはAmazon Musicを利用。通話のテストはskypeのテスト通話を使った。録音ソフトでは音質が良くても、skypeのテスト通話だと音質が悪いことが多々あったため、実際の通話シチュエーションに近い方を選んだ。
※ノイズキャンセル性能の比較は下記の動画を使った。
新幹線の車内音でリラックスする2時間[名古屋駅 - 広島駅] - YouTube 60dbほどで再生
【走行音】E233系3000番台〈東海道線〉東京→熱海 (2021.12) - YouTube 7分辺りのかなりうるさくなるところを70dbほどの音量で再生
【高音質4時間】スタバの音風景【作業用勉強用】 - YouTube

まとめ

  • 音質、ノイズキャンセル、使い勝手を総合的に評価してEarFun Air Pro 4
  • 音質、特に高音の良さを求めるのなら、Soundpeats Capsule 3 Pro+
  • 価格の安さとノイズキャンセルの性能で選ぶのならQCY Melobuds Pro
左からRedmi Buds 5 Pro / Air Pro 4 / Capsule 3 Pro + / Melobuds Pro / Soundcore P40i

EarFun Air Pro 4

7月末に登場した新製品だが、結論からいうと、特にこだわりがないのなら、この製品を買えば良い。ハイレゾCODEC対応、高性能のアクティブノイズキャンセル(以下ANC)、マルチポイント接続(LDACとの併用は不可。aptX adaptiveは併用できる)、ワイヤレス充電、装着検出とすべての機能が入っている。特にハイレゾCODECはLDACとaptX Adaptiveのどちらにも対応しているのは、高級モデルでもあまりない特徴だ。
レビューは大量にあるので細かく紹介はしないが、音質の良さはなかなかのものだ。capsule 3 Pro +と比較すると 女性ボーカルやアコースティックな楽曲で差は感じるのだが、両者にはそれなりの価格差があり、その価格を払う価値を、誰もが感じるかというと微妙ではある。
ノイズキャンセルの性能は capsule 3 Pro +に比べると少し弱さを感じるのだが、この価格帯としてはトップクラスであることには違いない。新幹線の車内音はよく下がったが、東海道線のうるさい音は耳障りかなというぐらい残っていた。
また、ケースのイヤーピースがおさまる場所にに余裕があるため、他社のイヤーピースを使いやすい。密着性の高いイヤーピースに交換すれば、ノイズキャンセルの性能が上がる。自分のおすすめのイヤーピースはTechnics EAHシリーズで使われているイヤーピースだ。Panasonicの公式サイトから入手できるが、自分は面倒なので、Yahoo!ショッピングで売っているところがあったので、そこから購入した。「Technics イヤーピース」で検索して見つけて欲しい。
ワイヤレスイヤホンがLDACに対応していても、LDACでの再生時間について触れられていないことが多いのだが、この製品もそうだった。なので実測したのだが、NC ON / LDACでの再生時間は4時間50分だった。ハイエンドモデルでもLDACは公称で3~4時間というものは多い中、かなり優秀である。なお、aptX Losslessだと5時間40分と更に優秀であるのだが、aptX Losslessに対応するSnapdragon採用スマホは高価なので、導入のハードルは高い。
※カジェログで10/20までのクーポンを配布中
【読者限定クーポンあり】予算1万円以下でワイヤレスイヤホンが欲しい?EarFun Air Pro 4一択でOK! | カジェログ

Technicsのイヤーピースをつけたところ

Soundpeats Capsule 3 Pro+

MEMドライバーを搭載して高音質が売りのイヤホンで、今回紹介したイヤホンの中では、高音が綺麗に出るため、一番よく使っている。女性ボーカルやアコースティックな楽曲をよく聴く人にはお勧めだ。
また、ノイズキャンセルの性能が高いのも嬉しい。新幹線の車内音はもちろん、東海道線のうるさい音もかなり下がった。
気になる点は、モード切り替えで、どうしてもノーマルモードがはさまれて、外音取り込みとノイズキャンセルのトグルにできないという仕様。一番の難点は再生時間の短さだ。ノイキャンON / LDAC接続は実測で3時間だった。3時間というのは、外出で電車に乗って移動、所用をこなし、どこかの店に入っていると、ちょうど店にいる時に切れるぐらいの感じである。
Edifier NeoBuds Pro 2は、音の良さとNC性能が高くて評価の高い製品だが、ノイキャンON / LDAC接続で2時間と非常に短かった。Capsule 3 Pro+は高音質とノイキャン性能の良さで、NeoBuds Pro 2と立ち位置が似ているといえる。
通話で使うと、騒音がある場所だと、かなりノイズが入り、マイクが実用に耐えなかったのも何気に難点である。
定価ベースだと、EAH-AZ40M2やAVIOT TE-W1、TE-V1Rといった他の機種も視野に入ってくるが、セール価格の1.1万円で検討したいところだ。

QCY Melobuds Pro

セール価格は5000円台とかなり安いのだが、この価格とは思えない驚異的なノイズキャンセル性能の高さを誇る。新幹線の車内音を再生した動画では、かなり効果的に音を下げててくれた。東海道線のうるさい音もかなり下がる。マクドナルドの店内では、人の声は明確に下がり、エアコンの音も消えた。音質にこだわりがなく、ノイズキャンセルの性能を求めるのならこれだ。
音質は悪いという訳でなく、紹介した他の製品と比べるとよくないというだけで、有象無象の格安ワイヤレスイヤホンと比べたら、良いので安心して欲しい。
Air Pro 4と比べると3000円近く安いので、プレゼントに選ぶのによさそう。

Soundcore P40i

AnkerがEarFun Air Pro 3の対抗のために出した製品だが、Air Pro 4が登場してしまった今となっては、微妙な製品となってしまった。音質、ノイズキャンセル性能ともにここで紹介した製品の中で一番下であった。利点はANC ON時公称10時間のかなり長い再生時間。ただ、Air Pro 4もAAC接続にすれば、ANC ONでも7.5時間になる。
今回紹介した製品の中では、唯一LDACに対応していない。iPhoneユーザーが多いので、コスト削減のためにLDAC接続は不要と判断したのだろうが、iPhoneユーザーならともかく、LDAC対応製品を持っている人がわざわざこの製品を選ぶ理由は再生時間ぐらいか。
音質は、レンジの狭さを感じるもので、アップテンポな曲は迫力があるのだが、アコースティックな曲のような繊細な表現はできない。
Anker製品は、単に製品の性能だけでなく、サポートの良さの魅力もあるだろう。ワイヤレスイヤホンは充電できなくなるなどのトラブルが多いので、手厚いサポートを求める向きもあるだろう。紛失に対する保証はないが、紛失に対して良いサポートがあったという話もネットで見かけた。ただ、正規の対応ではないので、基本的にどのメーカーも紛失に対してどうしようもないと考えた方が良い。
ここで紹介した製品の中では、一番有名な会社のAnkerだが、プレゼントする相手がメーカーの知名度などを気にするような人なら、Ankerは安定の選択だろう。またカラーバリエーションが多いのも魅力だ。
なお、P30iという更に安くて下のクラスの製品もあるが、これは本当に「Anker製品である」以外に選ぶ理由が思いつかない。

一番左がRedmi Buds 5 Proだが少し厚みがある

Xiaomi Redmi Buds 5 Pro

Soundcore P40iが出るまで、1万円以下では一番という人が多かった機種。店頭では売っておらず、通販のみのため、試聴は難しい。AliExpressのセールで7000円ほどで売っているのを見かけたので購入してみた。悪い製品ではないが、特別人に勧めたいかというと微妙であった。音質もこの価格としては良い方であったが、Capsule3 Pro+やAir Pro 4が出た今となっては、特筆するほどの良さはない。
ノイズキャンセルは公称-52dbで、ノイズキャンセル性能が高いという評が多いが、自分が試した中では、この5機種の中で勝てているのはP40iだけであった。マクドナルドでは、人の声の音量は下がっているのだが、声だけやけに目立ち、特に女性の声が聞こえた。エアコンの音もかなり聞こえた。
気になったのは、外音取り込み時に他機種と違って、音が軽くなってしまうこと。また、本体がちょっと大きめのため、ぴったりハマって遮音してくれる場所を探すのに手間取ってしまう。ノズルが短過ぎて、他社のイヤーピースをつけられないのも難点だ。
マイク性能の良さと、イヤホンの向きがAir Podと同じなので、取り出して耳につけやすい、LDACでマルチポイント接続できるのは利点だ。

Edifier NeoDots

この記事を書くのを決めたあと、発売され、購入したのだが、なかなか良い製品で、プライム感謝セールで安くなっているのでぜひ紹介したい。

  • ワイヤレス充電対応
  • 装着検出を装備
  • LDACでマルチポイント接続ができる(安価な製品ではRedmi Buds 5 Proぐらいしかできない)
  • ノイズキャンセルON / LDAC接続時の再生時間は7時間以上

音も良く、高音質で長時間再生を求める人なら、AVIOT製品とならんで、ぜひ検討して欲しい製品だ。

スワイプ操作が便利なAnker Soundcore Liberty 4 Pro


Ankerが大人気のワイヤレスイヤホン(以下TWS)「Soundcore Liberty 4」の上位機種「Soundcore Liberty 4 Pro」を発売した。ノイズキャンセルの性能とピンチ・スワイプ操作が気になり、10%ポイントとAnkerの製品提供で紹介しているYouTube動画で配られている10%オフクーポンを適用すれば、約16,000円程度とかなり安くなるので買ってみた。なお、この土日ならダブルポイントで+1000ポイントもつくので更にお買い得だ。
https://www.youtube.com/results?search_query=Soundcore+Liberty+4+Pro
結論から言うと、AnkerのTWSとしては音質、ノイズキャンセル性能ともに最高ではあるが、音質やノイズキャンセル性能に期待して2万円を出すのなら、他に選択肢はある。もっと安い1万円前後の価格帯にも選択肢はある。
この製品の一番の魅力は音質やノイズキャンセル性能ではなく、操作面である。TWSのタップ操作が苦手だったり、嫌いな人も多いと思うが、この製品ではタップではなく、ピンチ(つまむ)で操作をする。音量はスワイプ操作で直感的に変更できる。
ピンチ操作ができるTWSHUAWEI FreeBuds Pro 3、スワイプができるのはAirPods Pro 2や最近出たGoogle Pixel Buds Pro 2で、どれも高めの価格帯の製品であるため、2万円前後の製品でこの操作ができるというのは嬉しい。

ディープグリーンとスカイブルーが良い色だったので、どちらを買うか悩んだ。他にブラックとホワイトがある。

ワイヤレスイヤホン仁義なき戦い

1万円以下から1万円前半の価格帯のTWSで、コスパが良い製品を出していると言われていたメーカーはAnkerだった。2021年8月に登場したSoundcore Life P3は1万円を切る価格で、長い再生時間やアクティブノイズキャンセル、ワイヤレス充電など多機能さで人気になり、更に2022年に登場したSoundcore Liberty 4はハイレゾCODECのLDACやマルチポイントに対応しながら、14,990円と安めでありながら、全部入りイヤホン*1として高い人気を誇った。直近ではAmazonプライムデーセールで約1万円と大幅に安くなっていたこともあり、いまだにAmazonでは1ヶ月に3万点以上(各色の販売数を合計)も売れている化け物製品だ。

Air Pro3」で2023年に躍進したEarFun

こんなAnker一強の状態に一石を投じたのが中国系オーディオメーカーEarFunだった。もともと中国系メーカーは2000~5000円ぐらいの価格帯に「令和最新モデル」というような怪しげなTWSを大量投入しているが、アクティブノイズキャンセルは搭載しておらず、対応アプリもないというような安かろう悪かろう製品しかなかった。EarFunのように、アクティブノイズキャンセルを搭載して、対応アプリも出すという中国系メーカーはあまりなく、SoundpeatsやEdifierぐらいだった。
2023年頭にEarFunから登場したAir Pro 3は充実した性能ながらも1万円を切る低価格で、デジタルガジェット系YouTuberやブログの間で話題になり、知名度が上がっていった。SoundpeatsやEdifierも、低価格で多機能のTWSを投入しているが、EarFunに比べるとそこまでの存在感ではないこともあり、まだまだAnker一強時代は続きそうだ。
一昔前は5000円前後では、ノイズキャンセルを搭載してない製品が多かったが、最近は5000円前後の製品でもノイズキャンセルを搭載しているのが当たり前になってきており、現在はLiberty 4と同機能を持った製品が1万円を切っているというのが現状だ。

EarFunに対抗するAnker

EarFunの攻勢の前に、Ankerも手をこまねいていた訳でなく、今年4月にSoundcore P40iという製品を投入した。これはEarFunに喰われていた1万円以下のシェアを取り戻す戦略的な製品で、ハイレゾCODECに非対応以外は全部入りといえるTWSである。P40i登場時、Air Pro 3を絶賛したYouTubeのレビュアーたちは、P40iを最高のコスパを誇る製品と評価し、1万円以下のTWSの定番であると喧伝した。
しかし、EarFunが1年経って7月末に出した後継機のAir Pro 4は前作より音質が向上し、ハイエンド製品でも珍しいLDACとaptX adaptiveの両方に対応し、これまで搭載してなかった装着検出も搭載、まさに「全部入り」の製品であった。P40iを絶賛していたレビュアーたちはAir Pro 4を絶賛しており、P40iの天下は4ヶ月足らずで終わった。今となっては、P40iはAir Pro 4に音質、機能面ともにほぼ負けており、再生時間が少々長いことぐらいしか利点はなくなってしまった。
最近はレビューも動画の方が強いのだが、YouTubeTWSのレビュー動画を検索すれと、ついこの前まで1万円以下のコスパ最強TWSは「Air Pro3」だったのが、「Soundcore P40i」に変わり、今は「Air Pro 4」になっているのがよくわかる。「コスパ最強の神製品」がここまでコロコロ変わって大安売りされるのを見ていると、何がいったい本当にコスパ最強なんだよ!と思ってしまうが、TWSはオーディオ製品というよりも、デジタルガジェットなので、機能の搭載や性能の向上がしやすく、どうしても後発の方が有利なのだ。3ヶ月後にまた状況が違う可能性も大いにある。

Liberty 4 ProをAir Pro 4と比較する

Air Pro 4の多機能さに対抗できる製品が、今回のLiberty 4 Proである。Liberty 4 Proは発売後、絶賛する声が多いが、Air Pro 4と比較してみると、音質やノイズキャンセル性能といった基本的な面では大きな差を感じない。一番の違いは先ほど挙げたように操作面だ。
定価ベースでは倍近いほどの価格差がある両製品であるため、単純に性能面だけで、Liberty 4 Proを選ぶ理由は薄い。Ankerというメーカーが非常に好きなら、買っていいと思うが、特に思い入れがなく、それなりの性能のTWSが欲しいだけという人なら、EarFun Air Pro 4を買えば、失敗はない。

Liberty 4 Proの基本性能について

アップデートが長い!

アプリを起動すると、イヤホン本体、ケースのアップデートが始まり、じゃLDACで接続するかーと思って、設定を変えると、なんとまたイヤホン本体のアップデートが始まった。すぐに使えないというのはストレスなので、今後の出荷版はアップデートを反映させて欲しいものだ。
※その後、数回ファームウェアのアップデートがあった。これだけ頻繁にアップデートで機能が変わっていくイヤホンも珍しい

音量調整がスワイプ操作でできるのは便利

安価な製品を出す他の中国系オーディオメーカーが真似しないのが、この操作形態だ。はじめてピンチとスワイプ操作のTWSを使ったが、スワイプで音量が調整できるのは便利だった。
ピンチははずしたりつけたりする時に誤操作するのではと心配したが、イヤホンをはずしている時は操作を無効にする設定のおかげで問題はなかった。

P40iと比べると、大きく変わって高音質

人気がある製品ということで、Soundcore P40iを購入しているのだが、P40iの音はレンジが狭く、ボーカルの帯域と低音強調によって、楽曲を楽しく聴ける感じではあったが、繊細さに欠ける音のため、アコースティックな曲を聴くのは厳しかった。感想を見ていると、P40iの音質を絶賛する人は多く、こういった音作りがオーディオマニアでない人に評価されるのがよくわかる。
無印Liberty 4は試聴のみで、その時の印象はP40iよりは断然に良かったのだが、無印とProの音質の違いについて語れるほどでないので、他のレビューを参照して欲しい。レビューを見ていると、無印は高音が刺さるという評が多いが、Proではそこまで刺さる高音ではない。
Liberty 4 Proはバランスがよくなり、P40iと比較すると、レンジが広くて大幅に分解能が上がり、アコースティックな楽曲もいい感じに聴けるようになった。もちろんアップテンポな曲もよく聴けることには変わらない。
ただ、仮想敵であるAir Pro 4と音質を比較すると、それほど差は感じなかった。Liberty 4 Proの方が少し高音が出てない感があったが、イコライザーをアコースティックにすると高音が強調され、くっきり感が増す。お勧めのイコライザー設定だ。ともあれ、価格差ほどの音質の差を期待しない方が良いのだが、Air Pro 4のコストパフォーマンスが異常ともいえる。
2万円以下の製品で、音質が良い製品というと、AVIOT TE-W1やTechnics EAH-AZ40M2があるが(どちらも試聴のみ)、TE-W1は取り出しにくく、音の分解能は高いが、高音の伸びがいまいち、EAH-AZ40M2は音質は良いもののLDACでの再生時間が3.5時間(おそらく実際には3時間ぐらいだろう)と短いという難点がある。最近出たAVIOT TE-V1Rは試聴したのだが、TE-W1と比べると高音の伸びがかなりよくなっており、長い再生時間、取り出しやすさと相まって、自分の評価は高いのだが、ネットを検索しても、あまり購入している人はいない。
2万円以下で音質を求めるのなら、SoundPEATS Capsule 3 Pro+(所有)もお勧めだ。自分は高音が好きなので、Capsule 3 Pro+をよく使っているのだが、ノイズキャンセルの性能も高く、LDACでの再生時間が3時間という欠点以外は満足度が高い。女性ボーカルをよく聴く人なら、Liberty 4 Proより、Capsule 3 Pro+の方がお勧めである。
※POCO F6とLDAC接続で音質評価をした

ノイズキャンセル性能

低音はかなりがっちり消してくれるので、新幹線の音などはかなり消えた。ノイキャン性能は「Liberty 4 Pro = capusle 3 Pro+ >> Air Pro 4」こんな感じ。ただ、Liberty 4 Proの方が人の声に対して強い印象はあったので、少しでも良いノイズキャンセル性能を求めるのなら、Liberty 4 Proだろう。音質重視か、ノイズキャンセル重視かで選択が変わる
ただ、これぐらいの価格帯の製品は、低音は消えるものの、人の声は通りやすい。電車の車内放送などは音量は下がるが、そこそこ聞こえてくる。人の声を更にノイズキャンセルしたいのなら、SONY / BOSE / Appleといったノイズキャンセル性能で定評があるメーカーの最上位モデルを買うべきだ。
※参考記事 【特集】BOSE最新ノイキャンイヤフォンなら新幹線内ですら静寂に。WF-1000XM5やAir Pods Proと比べても好成績 - PC Watch

外音取り込みは自然さ足りず

いかにもマイクを通した音という感じで自然さは薄い。外音取り込みの人工感はAnker製品全般に言えるようだ。
※アップデートで少しよくなった印象

マイク性能はよくなってる?

紹介動画で無印やNCとの比較を見ると、マイクは騒音をうまく消しており、通話に向いてそう。
skypeの音声通話テストで確認したが、マイク性能はなかなか良い。

再生時間

まだ使いたてなのでよくわからないのが再生時間。公称ではノイズキャンセルONで7.5時間とあったが、短くなるLDAC接続時にどれぐらいになるか。
5分の充電で4時間再生できる急速充電があるので、うまく運用すれば、短くても気にならないかも。
※その後、テストをしたが、ノイキャンON / LDAC接続で4時間23分だった。この設定だと3~4時間の製品が多いし、急速充電もあるので、充分合格点だ。

Air Pro 4 / Capsule 3 Pro+のケースと比較すると大きめ

接続安定性

POCO F6のLDAC接続だと、10分に一回ぐらい接続が途切れることがあった。

気になったポイント

イヤーピースが薄くてはずすとひっくり返る

イヤーピースが薄めのせいで、はずすとひっくり返ってしまう。ただ、ノズルが六角形ながら円形に近いので、他社のイヤーピースを使うことはできる。

ケースの操作

売りとなっているケースのディスプレイだが、LDAC接続だと、3Dオーディオが使えないため、ノイキャンのレベルを変えるぐらいしか使い道がない。しかもノイキャンレベルは常に一番強くするという運用をしている場合はケースの操作は使わなくなってしまう。
番役立つのはケースを開けた時に短く表示さえるバッテリー残量だった。またこの機能のせいで、ケースが結構大きくなっている。

わかりやすいバッテリー残量表示。なんと小数点二桁まで表示してくれる

便利そうなEasy Chat機能

装着者が話すと、自動的に音楽の音量が下がり、外音取り込みモードになるEasy Chatはかなり機敏に反応して、実用性が高そうだった。ただ、独り言でも、すぐ反応してしまうので、独り言が多い人は注意だ。

装着検出機能はOFFにできない

装着検出機能はついているのだが、無印やNCのように装着検出をOFFにする機能がアプリからなくなっている。装着検出をOFFにできなくなったのは、この機能に依存する他の機能があるからではないかと推測した。イヤホンをはずした時、操作を無効にする設定(これ自体はOFFにできる)や、片方のイヤホンをはずすと、音楽が止まって、自動的に外音取り込みになり、元に戻すと、最初の状態に戻るという機能があるのだ。

相変わらずマルチポイントはLDAC非対応

Ankerのマルチポイント対応は早かったのだが、他社と同じく、LDACだとマルチポイントが使えないという仕様がずっと続いている。Technics EAH-AZ40M2ならマルチポイントは3つ対応で、2つまでならLDACを使える。Ankerもこれぐらいはやって欲しかった。
ファームウェアアップデートでなんとLDACでのマルチポイントに対応した

今回新たについた機能は本当に求められている機能?

ケースのディスプレイや、気圧センサーを搭載した航空機向けのノイズキャンセル最適化などがハード面での変化なのだが、ケースはディスプレイ搭載によって、大きくなってしまうなどの難点を生み出すことになってしまった。気圧センサーも飛行機なんて年に一回乗るか乗らないかなんだから、必要性は薄い。
今回の機能追加で、確実に良さを感じるのは、タイトル通りスワイプ操作ぐらいなのだ。
1万円前後の価格帯の製品は、機能や高音質化が充実化して、競争が激しい。この価格帯での正面勝負を避けて、多機能な高額モデルにするのなら、小手先の多機能化よりも、音質やノイズキャンセルでもっと圧倒的な性能差を見せて欲しかったところだ。

まとめ

  • 音質は今までのAnkerのような派手なドンシャリではなく、微弱ドンシャリで、アコースティックな楽曲も合っている。逆に過去のAnkerの音が好きな人は要注意
  • ノイズキャンセルは低音に対してはかなり強く、電車の走行音に対してはよく効く。店内の人の声もそれなりに音量は下がる
  • ノイズキャンセルONでも再生時間はそこそこ長い。充電が早いので、再生時間の不満は少ない
  • Anker製品はサポートが良いという評判が多い。ワイヤレスイヤホンは充電ができなくなったり、紛失などのトラブルも多いので、24ヶ月(Anker公式会員になった場合)というサポートの強さに期待して買うのはあり。単純な故障に対しては、すぐ新品を送ってくれる。紛失は基本保証されないようだが、片方紛失して連絡したら保証外と言いつつ、送付してくれたという報告があった。
  • ディープグリーンとスカイブルーのカラーは黒と白しかないメーカーが多い中、所有の満足感は高い
  • ケースの大きさが気になる人は無印やEarFun Air Pro 4にしよう
  • 10/10まで10%ポイントがつくが、それとクーポンを使っての実質1.6万円なら、お勧め度は高い。2万円だとちょっと悩むところ

AnkerはAppleを目指すのか

渋谷のANKERストアは、アップルストアの隣にできたが、ANKERはApple社のようなポジションを目指したいと感じる。今回のLiberty 4 Proのレビューは、YouTubeを中心にいわゆる案件ものがほとんどで絶賛ばかりで、まるでかつてのApple社の製品を思い出すような状況だった。
直近で出て、人気の高い多機能モデルのAir Pro 4との比較はユーザーとしては非常に気になると思うのだが、誰もしてなかった。これは案件ゆえの制限ではないか。
メーカー提供を受け、毎回最新機種を絶賛ばかりしているレビューばかりだと、受け手はどんどん不信になっていく。そんなことを感じた新製品の登場であった。

*1:TWSで一般的に全部入りと言われる機能として、ハイレゾCODEC対応、アクティブノイズキャンセル、マルチポイント接続は必須で、オプションとしてワイヤレス充電、装着検出が入る。Liberty 4はこれらの機能が全部入っていた

匿名ダイアリーのワイヤレスイヤホン記事でチューリングテストが行われていた

anond.hatelabo.jp
最近、ワイヤレスイヤホンのレビュー記事を見てると、どうもAIに書かせたと思われる文章にたびたび遭遇していたのだが、匿名ダイアリーに、これはAIだと断定できる記事が上がっていた。しかも、それに対して、AIだと指摘する人は非常に少なくて驚いた。AIが書いた文章でもAIだと思う人が少ないのなら、そりゃAIに文章書かせるよね。AIの書いた製品紹介の文章の特徴として、書き手の主観の少なさがあるのだが、逆にそれを客観性と感じて、良いと感じる人が多いのかもしれない。
そして、花見川さんが指摘しているように、紹介している機種があまりに少ない。秋に出た新型TWSならB&W Pi6 / Pi8は必須のはずだが、紹介されていない。YouTubeでのレビュー動画はカジェログの人ぐらいだったので、おそらく学習元がなかったのだろう。

今秋のワイヤレスイヤホン収穫について

勢いのある中華勢(Earfun/SOUNDPEATS/QCY)には全く触れておらず、BOSE QCEは前作と比べて接続時の初期不良多くて評価が微妙だし、Jabraは無線イヤホンはもう新型作らない宣言してる。日本語も違和感あるのでLLMが書いたのでは。

2024/09/22 23:48
b.hatena.ne.jp
JBL Tour Pro 3の部分で“イヤホン本体が小型化している”と書かれているが、3はデュアルドライバーのおかげで2よりわずかに大型化している。逆に重さは軽くなっているのは不思議だが。レビュー記事を読めば、だいたい書いてある情報なのだが、そこまでは学習できなかったようだ。
猥語と使っているだけでLLMでないという判定をしている人がいたが、あとから人間が追記した可能性もあるんだし、あまり良い判定基準ではないと思う。

ともあれ、2024年9月時点で、1万円前後でワイヤレスイヤホンが欲しい人は、EarFun Air Pro 4を買っておけば間違いないぞ! この辺りの価格帯の人気製品である EarFun Air Pro 4 / Soundpeats Capsule 3 Pro + / Anker Soundcore P40i / QCY Melobuds Pro / Xiaomi Redmi Buds 5 Pro を全部購入した上での見解である。