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最近はオーディオブログです

SC-PMX90紹介記事の補足

SC-PMX90を紹介した記事は、お陰様でかなりの人に見てもらえたが、気になった反応に対する補足をしたい。

SONY CMT-SX7を使っている人が多かった

自分がオーディオに興味を持った2021年時点だと、SC-PMX90と並んで、USB-DAC内蔵で低価格のいいミニコンポだったが、生産終了(ディスコン)してしまったのが残念。ソニーは純粋なオーディオ機器に関して、ポータブルオーディオに力を入れており、スピーカーを使った製品にはあまり力を入れていないので、もうミニコンポは作らないと思われる。

スピーカーはいらない、本体だけ欲しい

SC-PMX90と似た機能で、スピーカーが付属しない製品は、DENONやmarantzがCDレシーバーとして出している。具体的な機種としては、DENON RCD-M41やDENON CEOL RCD-N10、marantz MCR-612だ。CD非搭載で、デスクトップオーディオに向いたコンパクトなUSB-DAC内蔵のアンプは以前DENON PMA-60などあったが、みな生産終了してしまった。需要がないのだろうか。USB-DAC+ヘッドホンアンプの新製品は多く出るが、スピーカー用アンプは国産メーカー品だとTEAC AI-303のみで壊滅状態である。*1
RCD-M41は3万円と手頃だが、USB-DACはないので、PCから入力するのなら、USB-DACを用意するか、低価格で済ませたいのならPCのUSB出力を光デジタルに変換するDDCが必要だ。スピーカーの出力がバナナプラグなのが嬉しい。RCD-M41とMCR-612は去年値上げしたのだが、現在値上げ前の価格に戻っている。これは一時的な特価のようなので、購入を考えているのなら早めにした方がいい。

DENON RCD-M41用に用意されているスピーカーのSC-M41はコンパクトで低価格、高音質であり、デスクトップオーディオ用のスピーカーとしてお勧めだ。同様のモデルとして、DENON SC-N10がある。ただし、サイズ的な問題で、どうしても低音は弱めになる。www.haradesugi.com
AI-301DA-SPとSC-M41という、模範的なデスクトップオーディオ構成を導入したはらですぎさんは、音の良さに驚いている。コロナ禍で家にいることが増えている人も多いと思うが、家で聴く音楽の音質を高めると、QOLが確実に上がるので、ぜひとも挑戦して欲しい

PCなしでサブスク対応してほしい

PCなしで音楽配信に対応したい場合、音質を重視しなければ、配信アプリを入れたスマホBluetoothで接続すれば、特に追加投資なしでいける。
音質を重視するのなら、ネットワークプレイヤーのWiiM Miniの導入が考えられる。光デジタルで繋げば、音の劣化なしで聴けるが、1万円弱する製品を買うのなら、少し高いが、ネットワーク対応のSC-PMX900や、DENON CEOL RCD-N10、marantz MCR-612といったネットワーク対応レシーバーを買った方がいいだろう。なお、ネットワークプレイヤーはだいたい5万円ぐらいするので、WiiM Miniの1万円弱という価格は破格である。

10万円のスピーカーを勧めるなんてオーディオマニア怖い

デジタルガジェットのような電子機器は3年も使うとスペックが低くなってしまい、使いづらくなってしまうが、アナログデバイスであるスピーカーは最低5年、だいたい10年は保ってくれる。電子機器に比べれば、故障する率も非常に低い。*2自分は当初20年前のスピーカーを使っていたが、特に壊れたところはなかった。10万円のスピーカーが10年使えると考えれば、一ヶ月800円弱の出費であり、それほど高いという訳ではない。
2011年と少々古い記事だが、4gamerで良い記事があったので紹介しておく。

2万円台のサウンドバーの方が音質いいのでは

そういうことは、せめて店頭で音を聴いてから言って欲しい。サウンドバーにはBluetooth入力があるので、自分の好きな音源で聴くことができる。
もともと、サウンドバーよりスピーカー派であるが、サウンドバーの音楽での音質が気になったので、ヨドバシカメラでチェックしてきた。音源はBluetooth接続のスマホで、まず自分がお勧めのDHT-S517で試してみる。MUSICモードは空間の広がりがあるんだけど、なんか薄皮一枚を被っているような音に違和感があった。攻殻機動隊SACのOPの『inner universe』など空間の広がりを強調した曲だと合うことは合っていた。ピュアモードだと音はクリアになるのだけど、横の広がりがずいぶん狭くなって、サウンドバーと同じ横幅ぐらいにしかない感じで、かなりこじんまりとした音の空間になってしまった。
Polk AudioはREACTがなかったので、Signa S3を聴く。外部サブウーファーがあるので、低音は出るんだけど、展示の問題で、本体とサブウーファーが縦方向にずいぶん離れていたので、低音が明らかにサブウーファーから出ているのがわかってしまう。
Signa S4はS3よりは音がナチュラルだなと感じたが、同じく本体とサブウーファーが離れていたので、サブウーファーから低音が出てるのがよくわかった。クロスオーバーの周波数が高いと、サブウーファーから低音が出てるのがすぐにわかってしまう。サブウーファーの設置場所はよく考えないとダメそう。
3万円以上のサウンドバーでこれだから、2万円台は推して知るべしということで。結論として、サウンドバーで音楽を聴くというのは勧められないと強く感じた。音質はSC-PMX90の方が絶対的にいい。サウンドバーとは、あくまでインスタントラーメンであり、そこでラーメンの味を求めるのは酷である。サウンドバーでとにかく気になるのは音の空間の狭さだ。スピーカーは横に広くセッティングしないと空間の広がりが出ないのだが、サウンドバーは物理的な横幅に制限があるから、どうやっても音の空間が狭くなる。それを感じさせないために音の加工をするのだが、そうすると音のクリアさがなくなってしまい、ぼやっとしてしまう。AV Watchサウンドバーのレビューでは音楽もよく聴ける、みたいな記事が多いが、自分はあれには賛同しない。

ハードオフで、安い中古のスピーカーを買えばいい

上の話と少々矛盾するが、20年も経ったら、劣化が出ない訳ではない。特にウーファー部分に使われているウレタンやゴムは劣化しやすい。
オーディオ機器の寿命
スピーカーの音作りも変わってきているようで、20年前のミニコンポのスピーカーと中華製スピーカーを聴き比べても、中華製スピーカーの方が良かった。比較したミニコンポのスピーカーは、SOTECKENWOODが共同で作ったVH-7PC付属のLS-VH7だったのだが、高音のこもり具合が目立っていた。B&W CDM1NTという20年前に出ていた、オーディオマニア入門クラスのスピーカーを使っていたのだが、こちらもMONITOR AUDIO Bronze 50-6Gという最近のスピーカーに比べたら、高音が出ていないのを実感した。ハイレゾの普及とともに、高音を綺麗に出すことが重視されているのだろう。
ハードオフで売っている5000円ぐらいのスピーカーというのは、だいたい20年前のミニコンポ付属のスピーカーで、そんな中途半端なスピーカーを買うぐらいなら、SC-PMX90の付属スピーカーや、1万円程度の中華スピーカー、先に挙げた1万円台のSC-M41やSC-N10を勧める。
中古1万円以下で、お得なスピーカーを売っていることがない訳ではないが、それは知識がないと見極められない。自分はAVACの中古でMISSION MX-Sという2015年頃にONKYOが扱っていたイギリスのメーカーのスピーカーを送料込で8000円で買ったが、これは非常に音が良くて、良い買い物だった。中古でも、5万円ぐらいの予算があるのなら、型落ちになって安くなっているスピーカーが多いので、2010年代以降に出た製品を探すのもありだろう。DALIのZENSORシリーズなどが狙い目だ。

*1:AI-303はHDMI入力がついたために結構価格が上がってしまい、以前のAI-301シリーズに比べると手が出しにくい製品となってしまった。AI-301シリーズのような製品は珍しいので、中古を手に入れるのもありだろう。【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】TVもスマホもPCも。TEAC小型アンプ「AI-301DA-Z」を活用-AV Watch

*2:スピーカーは、接続する時にアンプの電源を切らなかったりなど、アンプとの接続で壊すことがある

3万円で買えるPanasonicのミニコンポSC-PMX90はPCやテレビの高音質化ができてオーディオ入門に最適

予算3万円で、良い音響環境を手に入れたいと考えた場合、どのような構成を考えるだろうか? 自分は、前の記事に書いたように、USB-DAC+アンプ+パッシブスピーカーを勧めている。低価格ということで、中華オーディオを主に紹介したが、中華オーディオは、アンプにヘッドホン出力がないとか、光デジタル入力がないなど機能面が少なく、目的が複数ある場合、USB-DACとヘッドホン用のアンプ、スピーカー用のアンプを組み合わせる必要がある。そうなると、統一したリモコンでコントロールは難しい。多機能さを求めるのなら、日本メーカーのミニコンポの方が便利だ。
PanasonicのミニコンポSC-PMX90は多機能な割に3万円前後と低価格で一押しのモデルだったのだが、2万円台半ばまで値下げしていたため、購入してみた。オーディオ製品は原材料や物流の高騰や円安の影響で値上げが続く中、なぜ値下げしたのか謎だが、ともあれオーディオ初心者が購入して間違いない製品が、この価格はバーゲンセールであった。現在は約3万と元に戻っているのだが、時々値下げを見かける。
Panasonic製品だけあって、だいたいの量販店で置いてあり、現物を確認しやすいのも良い。よく聴くCDや音源を入れたUSBメモリを持っていって、試聴すれば、このミニコンポの実力がよくわかる。Bluetooth入力もあるので、スマホを音源にしてもいい。
2022年版買ってよかったもの - 花見川の日記
花見川さんも自分の猛プッシュで気になり、購入して満足していただいているようでよかった。
パナソニックのミニコンポ「SC-PMX90」を徹底視聴!たっぷりとした低音が特徴的だが躍動感を高めたい - 特選街web
特選街での紹介。

多機能でスピーカー付属なのに3万円台というライバル不在の存在

3万円前後のミニコンポは珍しくはないのだが、SC-PMX90の特筆すべき点はその多機能である。低価格ミニコンポはCD再生を中心に、アナログのライン入力、ラジオぐらいしか搭載していないものが多いが、下記に挙げるように、USB-DACや光デジタル入力など、他の機種にない機能を搭載している。

USB-DAC内蔵でPCに接続するとハイレゾ再生できる

このミニコンポの一番の特徴で、PCと接続できるUSB-DACを内蔵したミニコンポというのは少ない。一般的なプリメインアンプまで含めれば、珍しくはないのだが、価格帯は10万円近くする製品が多い。PCと接続すると、PCM 24bit 192KHz / DSD 2.8MHzのハイレゾ音源が再生できる。Amazon Musicに入れば、ハイレゾ音源が聴き放題である。

CD再生

最近はすっかり影が薄くなってしまったCDだが、サブスクで聴けない曲をCDで持っている人も多いだろう。BDプレイヤーなどの多機能プレイヤーでもCDは再生できるが、CDの認識が遅いことが多い。この製品はCDの認識が速いのが嬉しい。

光デジタル入力

意外とミニコンポにない機能が、この光デジタル入力である。もはや古い規格となってしまった光デジタルだが、劣化せずにデジタルで音を転送してくれる光デジタルにはまだまだ利点がある。映像ソフトのサラウンドのようなマルチチャンネル転送は光デジタルだと帯域幅が狭いため、光デジタルではドルビーデジタルのような古い規格のフォーマットしか伝送できないが、ステレオなら充分現役だ。光デジタル入力があることで、テレビの音を劣化せずに入力でき、テレビの高音質化で非常に役立つ。*1

Bluetooth接続で再生

オーディオCODECはSBCとAACに対応しており、スマホで聴いている音楽を気軽に再生できる。SBCだとあまり音質に期待できなさそうだが、ひどく悪いと感じるほどでないので、BGMなどの用途なら問題ないだろう。

USBメモリによるハイレゾ再生

ディスプレイに日本語を表示できないという難点もあるが、PCを使わずにハイレゾ音源が気軽に再生できるのは便利だ。

リモコン

ニコンポなので、当然リモコンがついてくる。あまりスマートとはいえない配列のリモコンではあるが。

スピーカーを変更してアップグレードできる

付属スピーカーも価格を考えれば、充分素晴らしいのだが、スピーカーを変えて、アップグレードすると、より高音質が楽しめる。所有しているB&W 706S2を繋げたが、しっかり鳴らしてくれている。さすがにここまで高価格なスピーカーは勧めにくいが、スピーカーを変更するのなら、5万円以上のクラス、できたら10万円前後の製品を勧める。3万円ぐらいの価格帯のスピーカーでは変化がわかりにくいからだ。10万円前後となると、音が非常によくなったことを実感しやすくなる。マニアではない、普通の人なら、ここまでの投資で充分満足できるだろう。

バナナプラグには非対応

アンプのスピーカー出力が、形的にバナナプラグに対応しているように見えたが、非対応であった。

実際に使ってみて

音の空間の広がりがすばらしい

付属スピーカーと組み合わせでセッティングしてみると、量販店の店頭での試聴での印象と違い、空間の広がりが良く、音に包まれる感じがしっかりあった。スピーカーは2m間隔で設置したが、店頭だとスピーカーの間隔が1m切るぐらいの狭さだから、空間表現が弱くなりがちだったと思われる。オーディオでは当たり前の話だが、スピーカーのセッティングの大事さを思い知らされた。

音楽やテレビアニメのようなステレオ音源に最適

エンヤやルルティア新居昭乃菅野よう子志方あきこ梶浦由記、『ICO』のサントラのような空間表現が肝の楽曲では、空間の広がりがしっかり表現され、雄大なスケール感がある音を出してくれる。米津玄師やビリー・アイリッシュといった低音が強い音楽でもいい感じに低音が出てくれる。
音楽を高音質で聴きたい人や、MVやテレビアニメのようなステレオ音源の映像作品を見ることが多い人には文句なしにSC-PMX90を勧めたい。最近はテレビアニメでも『平家物語』『ゆるキャン△』といった音楽や音響に力を入れた作品は多い。特に、『パリピ孔明』『ヒーラーガール』『ぼっち・ざ・ろっく!』のように、音楽がテーマの作品も目立ってきており、そういったテレビアニメをテレビのスピーカーの音で聴くのではもったいない。良い音響で作品を視聴して、その作品の魅力を全力で味わってもらいたい。

映画も迫力ある重低音は弱いが、テレビのスピーカーとは段違いに音は良くなる

テレビのLG OLED55CXJPJAから光出力でSC-PMX90に接続し、Fire TVでYouTubeを再生してみた。『すずめの戸締まり』特報を、スピーカーの空間表現のベンチマークとして最近よく使っているのだが、SC-PMX90で再生すると、ボーカルの残響音が空間に溶け込んでいくのがよく再現されていて、空間の広がりが気持ち良く表現される。
映画で欲しいような重低音はさすがにちょっと弱く、『DUNE』の不気味な低音は少し迫力に欠けて、サブウーファーがついたサウンドバーの方が良さそうではある。
しかし、映画しか見ないという人ならともかく、音楽もよく聴きたいという人なら、SC-PMX90の方がお勧めである。サウンドバーはHDMI-CEC接続でテレビのリモコンで音量調節できるのは非常に便利だが、音質面では不利だからだ。サウンドバーは筐体が小さくスピーカーの口径が小さくて良い音質にしにくく、スピーカーユニットの間隔が狭いから、空間表現が普通のスピーカーに比べると弱い。なので音にエフェクトをかけて、音が広がっているように聴かせている。
閃光のハサウェイ』『劇場版少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『竜とそばかすの姫』『アイの歌声を聴かせて』『犬王』といった音楽に力を入れたアニメ映画ではDolby Atmosや5.1chといったフォーマットが使われているが、DHT-S217ぐらいの安い価格帯のサウンドバーを買うぐらいなら、空間表現が良いSC-PMX90を勧めたい。

同時購入したいもの

スピーカーケーブルは付属しているため、同時に購入したいものは、PCと接続するためにコネクタがA-BのUBSケーブル、テレビなら光オーディオケーブルだ。インシュレーターのようなアクセサリーは必須ではないので、のちほどの楽しみでいい。

スピーカーの置き方に注意

スピーカーは左右はできたら2m、最低でも1.5mぐらいの間が欲しい。間が狭いと、音の空間の広がりが弱くなってしまう。スピーカーの高さを調整するためのスピーカースタンドがあると理想だが、とりあえず、高さを調整するために椅子でも棚でも何でも使うといい。スピーカーのツイーターが耳と同じぐらいの高さになるようにしよう。

予算があるのなら、SC-PMX900もお勧め

上位機種として、SC-PMX900が発売されているが、最近実売が5万円前後と以前の6万円近くよりも下がってきており、価格差がなくなってきている。店頭で聴くレベルでも差をしっかり感じたので、予算があるのなら、SC-PMX900をお勧めする。

※追記:ブクマコメントで、複数の人がSONYのCMT-SX7について触れていたけど、自分も2021年時点ではSC-PMX90と並んでお勧めだった。でも、今は生産終了してしまい、中古もどうも割高なので現在は推薦から外れている

*1:ヘッドホン出力は音が劣化してしまうので音質重視なら、光デジタルかHDMI出力で。光デジタルの出力はPCMにしておかないと音が出ないので注意

『閃光のハサウェイ』のベスト視聴環境はLGの有機ELテレビとDENONのサウンドバーDHT-S517(予算20万円以内)

『水星の魔女』が終わったあと、地上波放映された『閃光のハサウェイ』が、また話題になっている。配信が始まった頃に戦闘シーンが暗くて見にくいという声が多かったが、黒が浮きやすい液晶テレビでは見づらく、視聴環境を選ぶ作品である。*1
また、地上波で放映される作品の常で、音声はステレオだが、『閃光のハサウェイ』の魅力の一つとして音響があり、大半の劇場アニメや邦画は5.1chの中、珍しくDolby Atmosで制作されている。*2Dolby Atmosとは、映画の一般的なサラウンドフォーマットの5.1chや7.1chと違い、上方からも音が聴こえる立体音響のフォーマットだ。ただし、大半の上映は5.1chで、Dolby Atmosはそれに対応した映画館だけで上映されたため、誰でも気軽に体験はできなかった。しかし、Blu-rayやUltra HD Blu-rayにはDolby Atmosの音声が収録されているので、家庭で楽しむことができる。*3
そんな感じで、「ピーキー過ぎてお前には無理だよ」と見る側の視聴環境を挑発している『閃光のハサウェイ』なので、なるべく良い環境で視聴したいところだが、ならば、どの程度の予算の環境なら、いい感じに見られるのか?
自分はLGの有機ELテレビOLED55CXPJAとヤマハのAVアンプRX-A4Aとスピーカー6台の環境で見ており*4、かなり良いレベルで映像と音響を楽しめている。しかし、テレビはともかく、音響面でここまでの投資は誰にでも勧められる訳でない。
そこで、なるべく予算を抑えながらも、満足できる環境を考えたが、LGの有機ELテレビOLED55B1PJAとDENONサウンドバーDHT-S517を推奨したい。テレビは現在セール中なので、ほぼ17万円という構成である。

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有機ELテレビなら、そこらの映画館よりも、良い画質で見られる

10万円台前半でセールされるLGの型落ち有機ELテレビ

見づらいという評判の夜間戦闘シーンも、照明を暗くした部屋の有機ELテレビで見れば、暗部がしっかり見える。*5BDを購入したあと、特典目的で109シネマズ二子玉川で見たことがあったのだが、小さいスクリーンだからか、映写機の性能が低いようで、映像のコントラスト比が低く、かなり眠い画面で、家のテレビの方が綺麗に見えるという体験をしてしまって以来、有機ELテレビへの信頼度はストップ高だ。*6
Twitterでも、『閃光のハサウェイ』を有機ELテレビで見て感動している人を多数確認できる。
閃光のハサウェイ 有機EL - Twitter検索 / Twitter
有機ELテレビは予算があるのなら、画質の評価が高いPanasonic、ゲームに強いREGZAソニーなどから好きなメーカーの製品を選べばいいが、予算を抑えたいのなら、AmazonでセールされているLGの型落ち有機ELテレビ一択である。LGの有機ELテレビは毎年、前年度モデルが10万円台前半にまで安くなるのが恒例で、今は2021年モデルがその対象となっている。ただ、2022年モデルはあまり価格が下がっていないところを見ると、世界的な価格高騰もあり、以前と同じようにセール対象になるとは限らないので注意したい。10万円台前半で買えるのは2021年モデルが最後かも。

55型のOLED55B1PJAが一押し

LGの有機ELテレビは、画面サイズのあとにつく型番でA、B、C、Gと各種シリーズがある。気をつけたいのが、Aシリーズのみ倍速パネルでないため、PS5やXbox Series Xで話題になる120Hz表示はできず、パネルの輝度も低くなっている。少しでも価格を抑えたい、どうせPS5やXboxで120Hzプレイができるタイトルはかなり少数なので、気にしないと割り切れる人向けだ。要はAシリーズはジムで、B以降はガンダムである。
65型はまだまだ高く、48型と55型もあまり価格が変わらないどころか、下手すると55型の方が安い時があるぐらいで、1月20日現在、119,800円とセール中の55型のOLED55B1PJAが一押しだ。小さめのサイズが欲しい人は48型のOLED48C1PJBを勧める。
LGの有機ELテレビの難点としては、番組表の表示が遅いことと、録画機能でなぜか数秒遅れて録画が開始されるため、頭が切れてしまうこと。テレビでの録画機能を重視する人は、REGZAなど録画に強い機種に変えるか、別途録画専用機を用意しよう。

有機ELテレビって焼き付くんでしょ?

ネットでは、しばしば有機ELテレビの焼付きが話題になるが、これは古いパネルを使っている製品での話。2018年以降の製品に採用されているパネルは焼付き対策がされている。利用頻度が高くて劣化が早い赤色サブピクセルの面積が拡大されたパネルが2018年以降の製品には搭載されている。
【西川善司の大画面☆マニア】新世代有機EL REGZA「65X920」は明るく美しい。地デジの安定感+4K(試験)放送体験-AV Watch

購入時に気を付けたいこと

有機ELテレビの一番の問題点は「パネルが非常に薄くて壊れやすいため、引っ越し業者は、別料金になったり、取り扱ってくれない」だろう。引っ越しの予定がある人は、引越し後に購入することを勧める。
これだけ高額商品だと、少しでも安い店を選びたくなるが、大型家電の購入は大規模なショップでした方がいい。Amazonなら、110円という激安価格で設置してくれるサービスがあり、絶対つけるべき。安い店はこの設置ができなかったり、できても費用が高かったり、配送料が高かったりするので、一見安く見えるだけの危険もある。
Amazonの長期保証はクロネコヤマトなので、店がつぶれるとなくなってしまう店独自の長期保証より安心できる。有機ELテレビでは、パネルは自然故障が多いという情報を見かけたこともあり、自分は長期保証に入った。
グレアパネルで、明るいところでは顔が映り込みやすいため、使う部屋の照明は明るさがコントロールできるものにしたい。外の明かりを遮断するための遮光カーテンもぜひとも導入したい。遮光カーテンというと、暗い色のものばかりというイメージがあるが、ニトリの遮光カーテンは明るい色のものでもしっかり遮光してくれる。

押井守監督も驚く暗階調表現

有機ELテレビは、コントラスト比が高いため、くっきりした画面のアニメと相性がいいのだが、映画もYouTubeもゲームも素晴らしい画質で体験できる。2018年に押井守監督が有機ELテレビで4Kの『GHOST IN THE SHELL』を見て、優れた暗部階調に驚いていたが、2018年当時VIERA TH-55FZ1000が約50万円と大変高価だった。50万円以上の予算が必要だったのが、3年経ったら)、メーカーは違うがなんと10万円台前半で買えてしまうのだ。*7
デジナタ連載「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」押井守インタビュー - コミックナタリー 特集・インタビュー
映像を見る機会が多い人は有機ELテレビの導入をぜひ検討して欲しい。

DENONサウンドバーDHT-S517でDolby Atmosを堪能する

Dolby Atmosで部屋が空襲されたダバオ市街になる

Dolby Atmosの効果は、ダバオ市街の空襲シーンが一番わかりやすい。頭上を不気味な音のペーネロペーが飛んだり、モビルスーツのビームやバルカンが頭の上で飛び交ったり、モビルスーツが落ちてきて、逃げ惑うダバオ市民の気分になれる。敵にミサイルやバルカンで総攻撃されるガウマンの気分もよくわかる。
自分が気に入っているのは冒頭のハイジャックパートで、ギギが「やっちゃいなよ、そんな偽物なんか」と言うシーンだ。ここで、脳内で聞こえるクェスの声は上の方から、ギギの声は周囲全体から聴こえて、目の前にいる本物のギギの声はしっかり真ん前から聞こえてくるのだ。ニュータイプとして、クェスやギギの心の声がハサウェイの脳内に響いたあと、目の前にいる本物のギギの声が前から聴こえてきて、現実に引き戻されるというのを音響で演出しているという、素晴らしいサウンドデザインなのだ。
以前、浅草にあるシアタースプラウトというDolby Atmos対応のレンタルシアターで、人を集めて、いろいろな映画を見る集まりをしたのだが、この声の聞こえる方向に注意してもらって、ハイジャックパートを見てもらうと、皆が「おお!」と驚いていた。Dolby Atmos対応のレンタルシアターは非常に少ないのだが、シアタースプラウトは非常に良い音響の設備なので、興味のある方はぜひとも使って欲しい。
レンタルシアター 東京 TheaterSPROUT 台東区浅草・上野エリア

音響は予算をかければかけるほど良くなる沼である

有機ELテレビは、画質の差はあるものの、一般的な目で見たら、その差は小さいため、一番安いLGのテレビで充分と言えるのだが、映像に比べると、音響は予算をかけただけ、誰が聴いても違いがわかるほど、良くなる。
テレビの環境で、音をよくするのなら、サウンドバーか、AVアンプとなるが、予算を抑えるとなると、サウンドバーになるだろう。売れ筋は3万円を切る価格帯の製品で、DHT-S217などがヒット商品だが、この価格帯は「テレビのスピーカーの音がよくなくて気になるから、それをちょっと改善したい」という目的ならともかく、「映画で迫力の音響を楽しみたい」という目的では、ちょっと厳しい。

音に包み込まれる体験を提供してくれるDHT-S517

現在の自分の環境では、緻密で情報量の多さと迫力を兼ね備えた厚みのある音、音の包まれ感がしっかりあるが、そんな環境を日頃体験している自分でも、実売5万円ほどのDHT-S517は他の低価格サウンドバーと比べて、段違いに迫力を感じた。これを聴いたあとだと、評価が高いDHT-S217はテレビの音がちょっとよくなったな、ぐらいの印象になってしまった。
DHT-S517はサブウーファーが別に用意されていることもあり、低音が充分出てくれる。また天井に音を反射させるイネーブルドスピーカーを内蔵していて、Dolby Atmosの上方向の音声が聴こえるので、音に包み込まれる感じが非常に高い。迫力の低音と音に包み込まれる感じという、映画館的な音響で求められる条件をクリアしてくれる。

DTSに非対応なので、映画のBDを多く所有している人は注意

DHT-S517で気になるのはDTSフォーマットに非対応という点で、BDをよく見る人は注意して欲しい。クリストファー・ノーラン作品に代表されるように、まだまだDTSフォーマットの作品が多いからだ。また『君の名は。』や『天気の子』といった新しめのアニメ映画ではDTSが多いので注意。映像配信サービスで使われるフォーマットは、Dolby Digital+とDolby Atmosのみだから問題ない。サウンドバーでは、この機種に限らず、コストを削るためか、DTSに非対応の製品は増えているので気をつけて欲しい。

後ろからの音が欲しいのなら、リアスピーカーがあるリアルサラウンドで

DHT-S517では、自分より前半分に音の空間が広がるのだが、リアスピーカーはないため、後ろに音の空間がない。これを解決するため、サウンドバーでは、バーチャルサラウンド機能が売りにされていることが多いが、この手のバーチャルサラウンド機能に期待してはいけない。後ろからの音が欲しいのなら、リアルサラウンド環境に行くしかない。
サウンドバーなら、フルワイヤレスモデルのサラウンドスピーカーのHT-A7000/5000やJBL BAR 1000を勧める。HT-A7000とサラウンドスピーカーのSA-RS5を揃えると20万円を超えてしまうが、HT-A5000とSA-RS5なら約17万円、JBL BAR 1000は約13万円と少し安い。2021年に登場して話題になったHT-A9はワイヤレスといっても、電源コードがあるので、バッテリー内蔵のフルワイヤレスモデルに比べたら、サラウンドスピーカーの使い勝手が悪い。

AVアンプなら、フロントスピーカーとリアスピーカー、イネーブルドスピーカーという構成でDolby Atomosが楽しめる。センタースピーカーは一人で見るのならなくても問題ない。トールボーイのスピーカーならかなり低音が出るので、サブウーファーも必須でない。最安値構成は、AVアンプ(SONY STR-DH790) / トールボーイスピーカー(SS-CS3) / ブックシェルフスピーカー(SS-CS5) / イネーブルドスピーカー(SS-CSE)だが、Amazonではスピーカーの在庫がなかったので、ヨドバシカメラでやってみると、ポイント還元込みで10万円とお手頃価格であった。

ただ、SONYのAVアンプのSTR-DH790は2018年と古いモデルなので、可能ならば、AVアンプは最新モデルを買うのを勧める。スピーカーは後からアップグレードしやすいが、AVアンプは最初からある程度の製品を買った方がいいのと、AVアンプは多機能なので、最新モデルの方ができることが多いからだ。エントリーモデルだと、DENON AVR-X1700Hと、型落ちで安くなっているmarantz NR1711が良い。
今回、『閃光のハサウェイ』を引き合いに紹介をしたが、LGの有機ELテレビとDHT-S517があれば、映画、ライブ映像、ゲームと、何でも非常に綺麗な映像と迫力ある音響で楽しめる。よく映画を見る人や、ゲームで遊ぶ人は、この視聴環境の導入をぜひとも検討して欲しい。

*1:『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』の暗くてよく見えない戦闘シーンについて演出かリアリティか様々な感想が集まる - Togetter

*2:公開当時、アニメでDolby Atmos採用は日本初というニュースがあったが、『BLAME! 』が日本初である。「BLAME! 」制作陣が、HDRやAtmosで目指した表現。CG+最新技術でアニメはどう変わる? - AV Watch

*3:配信だと、プライムビデオはステレオで、Netflixは5.1ch。何より配信サービスの音質は、パッケージソフトと比べると、かなり悪いのだが、テレビ版と比べるとまだ良かった。5.1chのnetflixがお勧め

*4:4.1.2chというもので、フロントはB&W 706S2でリアはFOCAL Aria 906、イネーブルドスピーカーはPolk Audui MXT90、サブウーファーFOSTEX CW200A

*5:暗い画面は、明るい部屋だと、見づらいので、部屋を暗くして見ることを勧める

*6:最近は映画館に行っては、有機ELテレビよりも映像のコントラスト比が低い、音響が微妙だと、海原雄山のような人間になっている

*7:自分が買ったのは2021年なので3年としたが、2020年からLGの型落ちモデルはこのような安売り状態になっていた。ナタリーの記事にあるレコーダーのDMR-UBX7050が約20万円。UHD BDプレイヤーだったらDP-UB32が約3.5万円であるが、今なら約2万円でPanasonicやLGのUHD BDプレイヤーが買える

アニメ『パリピ孔明』のプライムビデオでの配信は音質が悪いので、オンエアか別の配信サービスで見るべき

原作の良さをよく再現しているアニメ『パリピ孔明』を楽しく見ているのだが、内容とは関係ないところで気になることがあったので書いておく。
paripikoumei-anime.com
パリピ孔明』は様々な配信サービスで配信されているのだが*1、プライムビデオでは、なぜかまるでラジオのような音質の悪さなのだ。1話だけかと思ったら、2話も悪かった。Twitterで検索すると、プライムビデオでの音質が悪いという感想は多々見かけた。
twitter.com
※追記 波形をチェックしていた人がいた。これを見るとプライムビデオとYouTube公式だけおかしいのがよくわかる


最近Netflixに加入したのだが、こちらでは音質は問題なく、それ以外の配信サービスでの事情はわからないので、プライムビデオ特有の問題なのかどうかは不明だ。
せっかくの音楽アニメを音質が悪いプライムビデオで視聴すると、かなりもったいないので、視聴する際はオンエア、またはプライムビデオ以外の配信サービスの利用を勧めたい。
※追記 無料で見られる配信サービスだとABEMAとニコニコ動画GYAOTVerがある。どれも確認してみたが、音質の悪化はなかった
https://abema.tv/video/title/194-27
https://anime.nicovideo.jp/detail/paripikoumei-anime/
https://tver.jp/episodes/ept1za1err
https://gyao.yahoo.co.jp/title/%E3%83%91%E3%83%AA%E3%83%94%E5%AD%94%E6%98%8E/62452812-c30d-4d14-ac0b-324eef2b0847
Twitterで検索すると、プライムビデオだけ、音質が悪いというタイトルがちらほらあるようなのだが、自分で見た限り、『パリピ孔明』のように特に音質が悪いとは感じなかったので、ここでは触れない。

この音質が悪い問題、なんとavex picturesが公式で配信しているノンテロップOP/EDも音質が悪いのだ。
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音楽配信サービスでOPの「チキチキバンバン」で配信されているので、これとノンテロップOPを比較すると音質の悪さはよくわかるはずだ。
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パリピ孔明』は音楽アニメだけあって、音楽に非常に力が入っており、重低音が響くクラブのフロアの雰囲気がよく再現され、1話のギターの弾き語りでは、調整から入ると非常に凝っている。テレビやPCのスピーカーではなく、良い音響環境で見て欲しいアニメである。

*1:ABEMAプレミアムがオンエアより早く、オンエアに近い2次先行配信、更にオンエアより5日ほど遅れる一般配信とわかれている