PanasonicのミニコンポSC-PMX90は多機能な割に3万円前後と低価格で一押しのモデルだったのだが、2万円台半ばまで値下げしていたため、購入してみた。オーディオ製品は原材料や物流の高騰や円安の影響で値上げが続く中、なぜ値下げしたのか謎だが、ともあれオーディオ初心者が購入して間違いない製品が、この価格はバーゲンセールであった。現在は約3万と元に戻っているのだが、時々値下げを見かける。
Panasonic製品だけあって、だいたいの量販店で置いてあり、現物を確認しやすいのも良い。よく聴くCDや音源を入れたUSBメモリを持っていって、試聴すれば、このミニコンポの実力がよくわかる。Bluetooth入力もあるので、スマホを音源にしてもいい。
2022年版買ってよかったもの - 花見川の日記
花見川さんも自分の猛プッシュで気になり、購入して満足していただいているようでよかった。
パナソニックのミニコンポ「SC-PMX90」を徹底視聴!たっぷりとした低音が特徴的だが躍動感を高めたい - 特選街web
特選街での紹介。
多機能でスピーカー付属なのに3万円台というライバル不在の存在
3万円前後のミニコンポは珍しくはないのだが、SC-PMX90の特筆すべき点はその多機能である。低価格ミニコンポはCD再生を中心に、アナログのライン入力、ラジオぐらいしか搭載していないものが多いが、下記に挙げるように、USB-DACや光デジタル入力など、他の機種にない機能を搭載している。
USB-DAC内蔵でPCに接続するとハイレゾ再生できる
このミニコンポの一番の特徴で、PCと接続できるUSB-DACを内蔵したミニコンポというのは少ない。一般的なプリメインアンプまで含めれば、珍しくはないのだが、価格帯は10万円近くする製品が多い。PCと接続すると、PCM 24bit 192KHz / DSD 2.8MHzのハイレゾ音源が再生できる。Amazon Musicに入れば、ハイレゾ音源が聴き放題である。
CD再生
最近はすっかり影が薄くなってしまったCDだが、サブスクで聴けない曲をCDで持っている人も多いだろう。BDプレイヤーなどの多機能プレイヤーでもCDは再生できるが、CDの認識が遅いことが多い。この製品はCDの認識が速いのが嬉しい。
光デジタル入力
意外とミニコンポにない機能が、この光デジタル入力である。もはや古い規格となってしまった光デジタルだが、劣化せずにデジタルで音を転送してくれる光デジタルにはまだまだ利点がある。映像ソフトのサラウンドのようなマルチチャンネル転送は光デジタルだと帯域幅が狭いため、光デジタルではドルビーデジタルのような古い規格のフォーマットしか伝送できないが、ステレオなら充分現役だ。光デジタル入力があることで、テレビの音を劣化せずに入力でき、テレビの高音質化で非常に役立つ。*1
Bluetooth接続で再生
オーディオCODECはSBCとAACに対応しており、スマホで聴いている音楽を気軽に再生できる。SBCだとあまり音質に期待できなさそうだが、ひどく悪いと感じるほどでないので、BGMなどの用途なら問題ないだろう。
リモコン
ミニコンポなので、当然リモコンがついてくる。あまりスマートとはいえない配列のリモコンではあるが。
スピーカーを変更してアップグレードできる
付属スピーカーも価格を考えれば、充分素晴らしいのだが、スピーカーを変えて、アップグレードすると、より高音質が楽しめる。所有しているB&W 706S2を繋げたが、しっかり鳴らしてくれている。さすがにここまで高価格なスピーカーは勧めにくいが、スピーカーを変更するのなら、5万円以上のクラス、できたら10万円前後の製品を勧める。3万円ぐらいの価格帯のスピーカーでは変化がわかりにくいからだ。10万円前後となると、音が非常によくなったことを実感しやすくなる。マニアではない、普通の人なら、ここまでの投資で充分満足できるだろう。
バナナプラグには非対応
アンプのスピーカー出力が、形的にバナナプラグに対応しているように見えたが、非対応であった。
実際に使ってみて
音の空間の広がりがすばらしい
付属スピーカーと組み合わせでセッティングしてみると、量販店の店頭での試聴での印象と違い、空間の広がりが良く、音に包まれる感じがしっかりあった。スピーカーは2m間隔で設置したが、店頭だとスピーカーの間隔が1m切るぐらいの狭さだから、空間表現が弱くなりがちだったと思われる。オーディオでは当たり前の話だが、スピーカーのセッティングの大事さを思い知らされた。
音楽やテレビアニメのようなステレオ音源に最適
エンヤやルルティア、新居昭乃、菅野よう子、志方あきこ、梶浦由記、『ICO』のサントラのような空間表現が肝の楽曲では、空間の広がりがしっかり表現され、雄大なスケール感がある音を出してくれる。米津玄師やビリー・アイリッシュといった低音が強い音楽でもいい感じに低音が出てくれる。
音楽を高音質で聴きたい人や、MVやテレビアニメのようなステレオ音源の映像作品を見ることが多い人には文句なしにSC-PMX90を勧めたい。最近はテレビアニメでも『平家物語』『ゆるキャン△』といった音楽や音響に力を入れた作品は多い。特に、『パリピ孔明』『ヒーラーガール』『ぼっち・ざ・ろっく!』のように、音楽がテーマの作品も目立ってきており、そういったテレビアニメをテレビのスピーカーの音で聴くのではもったいない。良い音響で作品を視聴して、その作品の魅力を全力で味わってもらいたい。
映画も迫力ある重低音は弱いが、テレビのスピーカーとは段違いに音は良くなる
テレビのLG OLED55CXJPJAから光出力でSC-PMX90に接続し、Fire TVでYouTubeを再生してみた。『すずめの戸締まり』特報を、スピーカーの空間表現のベンチマークとして最近よく使っているのだが、SC-PMX90で再生すると、ボーカルの残響音が空間に溶け込んでいくのがよく再現されていて、空間の広がりが気持ち良く表現される。
映画で欲しいような重低音はさすがにちょっと弱く、『DUNE』の不気味な低音は少し迫力に欠けて、サブウーファーがついたサウンドバーの方が良さそうではある。
しかし、映画しか見ないという人ならともかく、音楽もよく聴きたいという人なら、SC-PMX90の方がお勧めである。サウンドバーはHDMI-CEC接続でテレビのリモコンで音量調節できるのは非常に便利だが、音質面では不利だからだ。サウンドバーは筐体が小さくスピーカーの口径が小さくて良い音質にしにくく、スピーカーユニットの間隔が狭いから、空間表現が普通のスピーカーに比べると弱い。なので音にエフェクトをかけて、音が広がっているように聴かせている。
『閃光のハサウェイ』『劇場版少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『竜とそばかすの姫』『アイの歌声を聴かせて』『犬王』といった音楽に力を入れたアニメ映画ではDolby Atmosや5.1chといったフォーマットが使われているが、DHT-S217ぐらいの安い価格帯のサウンドバーを買うぐらいなら、空間表現が良いSC-PMX90を勧めたい。
同時購入したいもの
スピーカーケーブルは付属しているため、同時に購入したいものは、PCと接続するためにコネクタがA-BのUBSケーブル、テレビなら光オーディオケーブルだ。インシュレーターのようなアクセサリーは必須ではないので、のちほどの楽しみでいい。
スピーカーの置き方に注意
スピーカーは左右はできたら2m、最低でも1.5mぐらいの間が欲しい。間が狭いと、音の空間の広がりが弱くなってしまう。スピーカーの高さを調整するためのスピーカースタンドがあると理想だが、とりあえず、高さを調整するために椅子でも棚でも何でも使うといい。スピーカーのツイーターが耳と同じぐらいの高さになるようにしよう。
予算があるのなら、SC-PMX900もお勧め
上位機種として、SC-PMX900が発売されているが、最近実売が5万円前後と以前の6万円近くよりも下がってきており、価格差がなくなってきている。店頭で聴くレベルでも差をしっかり感じたので、予算があるのなら、SC-PMX900をお勧めする。
※追記:ブクマコメントで、複数の人がSONYのCMT-SX7について触れていたけど、自分も2021年時点ではSC-PMX90と並んでお勧めだった。でも、今は生産終了してしまい、中古もどうも割高なので現在は推薦から外れている