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無知・無関心であることが中立という考え/「どっちもどっち」という罠

南京事件の論争について触れたからには、あの論争に関する自分の見解がわかる記事をアップさせたほうがいい気がしてきたので、アップするタイミングを見失ってお蔵入りさせていた記事をアップする。かなり長いので注意。
以前、知識優越感ゲーム話題でfromdusktildawnさんがこのようなブクマコメントしていた。
はてなブックマーク - 知識を優越感ゲームに使っているかどうかの見分け方 - ARTIFACT@ハテナ系

fromdusktildawn まあ、実際には優越感ゲームはしてもしなくても現実はあまり変わらない。優越感ゲームが云々と言ってる人の横を素通りして具体的なチャンスをつかみ成果を重ねたヤツが充実した人生を送れる、ただそれだけ。

南京事件の議論の時のfromdusktildawnさんの態度って、妙な言い訳して泥沼に陥ってたんじゃ? 「俺は南京事件議論の知識はないけど、(なぜか)議論は俯瞰できるぜ!」って優越感ゲームを仕掛けたんだけど、論争の知識がないのになんで俯瞰できるんだよ!って突っ込まれて、謝罪したものだと思ってた。
専門家の意見に疑問を持つことは許されない - 劇場管理人のコメント - 分裂勘違い君劇場グループ[↑B]

一般人は、ひたすら専門家の意見をありがたく聞くだけで、
一般人はその意見に疑問を持つことは許されないし、
自分から何かを発言するなどもっての他ということですね。

あの件の教訓は、知らないことに対しては謙虚になればいい、だろうだと思っていたんだけど、そりゃあ、こういう逆ギレする訳だ。知識がある相手に対して、誠実な態度を取れないんだから。相手は専門家というよりも、趣味で詳しい人たち、であるが。
関連エントリについて - Apes! Not Monkeys! はてな別館[↑B]

hokusyuさんが言っているのは「怠惰なバカ野郎がまじめな研究者のやっていることに対して何事かを物申す権利はこれっぽっちも無い」ということであり、「一般人がまじめな研究者のやっていることに対して何事かを物申す権利はこれっぽっちも無い」ではない。

前回も引用したけど誤解した人が出ないようにするために。
南京事件議論まとめ - 萌え理論Blog[↑B]
言及記事まとめはあるけど、自分が興味あった視点でピックアップしてみる。
コメント欄とブクマコメント - Apes! Not Monkeys! はてな別館[↑B]

mujin 2008/01/03 14:29 光市母子殺人事件がブログなどで話題になっているとき、弁護団が被告人を弁護するのは手続きからいって当然のことだと弁護士の立場から意見が寄せられたのに対し、「わたしたち無知な一般人の感覚では納得できません」という反発があったのを思いおこさせます。無知・無関心であることが中立であり、中立であるから受容されるべきと信じているのではないかなぁ。コメント欄に書かないで場外でつぶやくのも、当事者性を帯びて無関心を武器に使えなくなることを恐れ、当事者はどっちもどっちだが自分は絶対中立的に論争を俯瞰できるという自負を維持したいからでもあるのでしょう。こうした無知を武器にする病気をこじらせるとそのうち南京事件の否定論者になって「おれを説得してみろ」という論法になってくるわけですね。fromdusktildawnさんがこの論法に片足を突っこみつつありますが(笑)。

無知・無関心であることが中立を主張させるのではないか?という推測。政治性を忌避することが政治性を生むことへの意識のなさ。最初、政治性を忌避することの政治性に対して無自覚なのか?と思ったんだけど、いろいろな議論を見ていると、別に無自覚ではなくて、それを利用している人が多い印象。
確かにこれはいろいろな場面でありそうなので、気をつけたいところ。ブログ同士での小競り合いのようなレベルにおいて「どっちもどっち」という認識を持ってしまうのはしょうがないけど、今回の南京事件のように過去に膨大な議論があった上での議論において「どっちもどっち」という認識は避けたいところ。

skywave1493 2008/01/04 00:26 個人的に気になるんですが、例えばこの「自称中道」の人は北朝鮮による日本人拉致問題でも「過去に日本も悪い事したしどっちもどっちだよね」とか例の橋下弁護団懲戒請求騒動とかでも「どっちもどっち」と言う結論になるんでしょうか。この辺りに対してどう答えるかで物事に対して「どっちもどっち」の中道でいくという人の本音が出てきそうな気もしますね。
Apeman 2008/01/04 01:04 Disりあいならインテリジェント・デザイン論者とその批判者の間にも、「水伝」信者とその批判者の間にも、「9.11陰謀論」者とその批判者の間にも、「アポロは月にってない」論者とその間にも…その他いくらでも見いだせるわけですが、「どっちもどっち」論者が出現する比率を比較してみると面白そうですね。

「どっちもどっち」が常時適用されずに、恣意的な適用がされるだろうという推測。

http://anond.hatelabo.jp/20080104052304
周知の通り、はてな界隈には(俺を含め)情報技術者とか理系大学生が結構いるのだけど(アーリーアダプタ(笑)だからね)、南京事件に関する議論に対して「どっちもどっちだ」という反応を顕著に見せているのは恐らくこの層だろう。自然科学的方法論に毒された人間がこの問題を眺めると、そういう結論にならざるを得ないんだよ。自然科学では手続きの妥当性によって客観的な正当性が担保されるから、相手の人格否定に重きを置くような論者同士の意見には優劣を付けられない。主張の内容レベル以前の問題で。だから、「どっちもどっち」は「主張の内容のレベルが同程度だ」という意味じゃなくて、単純に「手続きのレベルが同程度だ」という意味でしかない。

この匿名ダイアリーの記事を書いたような人は、まさにmujinさんが想定しているような人で、何かのきっかけで否定論者になるかもしれない層なんだろうなあと思った。
理系とか関係ないですから - Apes! Not Monkeys! はてな別館[↑B]
上の記事への反論。この記事のブクマコメント欄で、今回の議論の背景の一つがわかる気はする。今回の件に関する記事への愛・蔵太さんのブクマコメントを見ていると、ニヤニヤしちゃうね!
各地のコメント欄で以前自分が書いたとある記事がリンクされていて笑った。愛・蔵太さんは、マスコミの伝言ゲーム追求話題に関してはよくやってると思うけど、旧軍関係や歴史の話題に関しては、バイアスを感じちゃうからなあ。最近も沖縄の「集団自決」のキーワードでやってるし。今回のブクマコメントでの言動を見ていて、ますますそのバイアスを感じてしまった。
南京事件(南京大虐殺)について考えるための瑣末な疑問2点+αについて(追記あり) - 愛・蔵太のすこししらべて書く日記[↑B]
ここのコメント欄が興味深い。コメント欄でトロープさんという人に質問されて、最後は「そんなに回答・質問しなくてもいいですよ。質問4に関しては、NOとだけ答えておきます。その当時も今も、南京大虐殺には、数字も含めてそんなに興味はありません」という始末。興味がないなら言及しないよね!


じゃ、3分で読めるようにまとめましょう - Apes! Not Monkeys! はてな別館[↑B]

しまうま 2008/01/04 16:20 >歴史修正主義者か、反歴史修正主義者のどちらかだと思われると、めんどくさいんです。
黙っていればどちらとも思われないですけどなにか?それとも南京事件に一切コミットしない人に対して(ちなみにこれが世の中の99%ですが)「お前はどうなんだ!」とコミットを強制する人がいる(空気がある)ということですか(コミットを強制されたのですか?)到底信じられませんなあ。そんな空気がどこにあるんでしょうか。適当な言い訳は見苦しいですよ。
知らないくせに勝手にコミットした以上その政治性は問われて当然だと思いますね。
しまうま 2008/01/04 16:44 それにしても普通ネットにアクセスしてブログ・コメント・ブクマでどのような言論活動を営むのかって「自発性」が基本だと思っていたんだけども。「政治的イシューに首を突っ込んだが自分の政治的言論は生活上の必要に迫られてやむを得ずしたことだから、政治性について不問にしてくれ」とか言い出す人が出て来るとは驚きました。自由主義社会における「言論」とは「“自律”した個人」が前提となって展開されるものだとばかり思っていたんですが。

議題に対して何も言及しなければ政治性を見出されないのに、言及したのにも関わらず、中立だと思ってくれという不思議。
無関心の表明、表明する無関心 - しなちょうメルクマール - 熊手部 (bearhand)[↑B]

そういう表明、というのはつまり「無関心の表明」のようなものだけれど、「表明する無関心」というのは矛盾してるよね。無関心ならスルーすればよさそうなものなのに。

同じような辺りをシナ千代さんが触れている。
あと、ブクマコメント(http://b.hatena.ne.jp/rna/20080104#bookmark-6985948)で知った記事。
29日に出さなかった「教養」という論点について - インタラクティヴ読書ノート別館の別館[↑B]

つまりそのような、態度としての教養が、あのやりとりにおける内藤からは感じられなかったのである。クレクレ厨が嫌われるのは、ただ単に、自分からは何も有益な知識を提供せず、他人の知識にただ乗りしようとするからではない。他人の知識を尊敬していないからだ。断片的な情報・知識の背後にある知恵への尊敬を欠いたままで、ただただ情報の表層的な効用だけを追い求めるからだ。

これはfromdusktildawnさんの態度と近いものを感じる。ここで言う「クレクレ厨」は専門家に対して「上から目線だ」って言いそう。
はてなブックマーク - 中学生では分からない差分の話 - 過ぎ去ろうとしない過去

lovelovedog 「つまり、知識が無いのに「差分」の話なんてできるわけないんですよ」わかりやすすぎる上から目線/こういう物言いでは説得される人は少ないと思うんだけど、応援している人はそれをどう思うんだろうか

「上から目線が気に入らない」 - 模型とキャラ弁の日記[↑B]

論争になっていることに関する知識がないのに関わらず上から目線で知ったようなことを言う評論家気取りの人が自分の無知を指摘された際に不勉強を省みない自らの態度は棚に上げて無知を指摘した人に対して言う言葉。

悪魔の辞典風。
歴史修正主義の手口について - 児童小銃[↑B]

慎重でバランス感覚を大事にするタイプの人ほどこの手の「足止め」にひっかかります。バランス感覚というのはコスト感覚にも通じるもので、「議論の捏造」は議論をトレースするコストを水増しして見せることで、このコスト感覚に訴えるのです。そして「自分が納得するだけのものを得るにはコストがかかりすぎる」という合理的な判断に導けば足止め完了。「自称中立」と言うと自分のバイアスに気付かないマヌケというニュアンスがありますが、そうでなくとも引っかかるのがこの手の「足止め」なのです。

今回の議論から、歴史修正主義がよく使う手口をうまくまとめている。陰謀論も同じ手口だろう。
南京事件絡みのやりとりの感想 - good2ndの日記[↑B]

さらに、箸にも棒にもかからぬ愚論を批判する機会がどうしても多くなるので、瑣末なことばかり問題にされているように見えてしまう。ニセ科学などと比較して、具体的な史料抜きで批判できることは少ないので、調べようという努力をせずにいると突っ込みを入れることができない。じゃあ黙ってればまだマシなのですが「新書一冊読むのさえ面倒だが、とにかく何か気の利いたこと・威勢のいいことを言いたい」という欲求が強い人が多すぎる。で、ロクに調べもせずに何かを言おうとすると自称中立になってしまう。今回の彼は、事件そのものではなく「メタ」でそういう所に立ったわけですが、もうちょっと頭が悪い人だと「あった派もなかった派もどっちもどっち。歴史は勝者が作るもの」などと嘯くことになるんでしょう。

たしかにブログというかネットには「新書一冊読むのさえ面倒だが、とにかく何か気の利いたこと・威勢のいいことを言いたい」という人が一杯!
※以前自分の書いた記事
ARTIFACT ―人工事実― : ブログのワイドショー化[↑B]


論争傍観者を自称する人間についての二つの問題 - Close to the Wall[↑B]
「賢明であると自認することと、賢明であろうと努めることとの大きな溝」

空気を読んで撤退したのだろうが、このブクマコメの

小利口でプライドだけは高い人なんだなと思った。

というのは私も同感だ。そしてプライドと表裏一体の、虚心に勉強しようと言う態度への軽侮のせいで、素人だけど頭のいいオレが厄介な事件を華麗に斬って見せてオレ理論の鋭さをアピールするぜ、みたいなどうしようもないことになってしまったのが彼の南京事件についての記事だと思う(言い過ぎだろうか? しかし、間違っているとも思わない)。

やっぱり、いろいろな態度からこれは感じちゃうよなあ。だからこそ、最初の話に繋がるし。
自分はこの議論は議論自身より、fromdusktildawnさんの記事や言動に注目していた。いつのものように、何回もブクマコメントを書き直していたり。
※今回のではないが、ブクマコメントの書き換え履歴の例
5つの罠の種明かし - くろいぬの矛盾メモ[↑B]
自分から言及したのに「美味しいモノ食べたり女の子とエロいことしたり金儲けしたりする時間を削って、こういうことに時間とエネルギーを注ぎ込むなんて、オイラのような凡人には理解できんわ」みたいなブクマコメント(既に書き換えられている)で相手を挑発(される人もいないと思うが)していたけど、この手の「何熱くなってるんですか?」はそもそも自分も反応をたくさんしている時点で、「それはあなたも同じだから!」というブーメランを速攻で食らうというのはわかって言ってるのかどうかが気になる。トリックスターならトリックスターらしく、もっと堂々して欲しいもんだ。
あとコメントでの発言も疑問があった。

http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20080104/p5#c1199428744
fromdusktildawn 2008/01/04 15:39 >>それの何がまずいんですか?
>そういう振る舞いが歴史修正主義を利しているからです。

実際に、ぼくはそのどちらでもないんですよ。
そして、それを表明しないと不便なわけです。
歴史修正主義者か、反歴史修正主義者のどちらかだと思われると、めんどくさいんです。
だから、そのどちらでもないということを表明した。

歴史修正主義を利させないという目的のためだけに、不便な生活を受け入れろと?

> なんで勝手に「通俗的」をつけるんですか?

学術用語としての「進化論」と日常語の「進化論」を混同されると
困るからです。「通俗的」という修飾詞をつけることで、
日常語における「進化論」であることを明示しました。

id:yamatedolphinさんが質問しているけど、fromdusktildawnさんの「歴史修正主義を利させないという目的のためだけに、不便な生活を受け入れろと?」の不便って一体何なのか謎。
re: 南京 - Usada’s Backyard[↑B]
このまとめが上手かったなあ。
あとは、今まで知らなかった不思議な方々を発見できたのは楽しかった。それとエンジニア系と思われる人たちによる記事のブクマコメントが印象に残った。自分がよく知らない話題のことで論争が行われている時の態度か。
ちゃんと説明しない専門家が悪いと言う人たちがいたけど、今回関わっている人たちは趣味として活動している人たちであって、専門家ではない。その人たちが、関心があるのならいい新書あるよ、興味あるのなら読めば?と言っても読む人は出ないようだ。ネット時代は、新書一冊も読もうとしないで、議論にコミットしようとする人たちを納得させないといけないことに。逆にいえば、新書程度のまとまった情報よりも、ウェブサイトで得られる程度の断片的な情報だけのほうが広まりやすく、そうした情報は扇動に使いやすいということか。大変な洗脳大戦…。
今回の騒動の反省 - 幼児未満初老以上[↑B]

マチュアがプロを「指先一つでダウン」させようとすると、ときどき死ぬ

素晴らしい一行まとめ。
南京事件に関する劇場管理人の発言についてのFAQおよび謝罪(はてブコメントやトラバにまとめて回答します) - 劇場管理人のコメント - 分裂勘違い君劇場グループ[↑B]
最終的な本人による総括。