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「下流社会」論における携帯の立場は胡散臭くね?

下流社会 新たな階層集団の出現』を読んでなくて、
内田樹の研究室: 「下流生活者」たち
http://blog.tatsuru.com/archives/001341.php
この記事での引用ぐらいしか見てないので、書籍にはちゃんと根拠が書いてあるのかもしれないのだけれど。
この書籍では、PCでインターネットを使う人たちも「下流」となっているそうだけど、そうなるとPoorman's PCといわれた携帯は、どういう位置づけに?
内田樹氏の引用を見る限り、なんかPCも携帯も一緒に扱われているっぽい。
「いま人々が感じている不安は“中流生活からの脱落”という不安だ(山田昌弘
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C478131471/E20050914142800/

彼らにとっての人並みの中流生活とは、エアコンの付いた部屋に住み、ケータイ通話料と車のローンが払え、インターネットが使えるパソコンがある環境

この「彼ら」は若者。昔から、中流生活は「モノ」で決まることが多く、昔から三種の神器とか言われていたんだから、別にそう思っていても不思議ないと思うのだが、なんかすごいネガティブな思いを感じる。
山田昌弘氏は、『希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』(ISBN:4480863605)の著者だが、下流社会と言う人たちに共通している感覚な気がする。なんというか、下流社会という名を借りた若者論をやりたいだけなんじゃないかと。と書くと、下流社会を否定するような文章に見えるけど、下流社会というか、所得がかなり極端化するという予測に関しては別に疑問がある訳ではない。安易な若者論やってないか?という話。
その辺のPCと携帯のネットの差の情報がないか調べていたら、ケータイラボ(http://keitai.sfc.keio.ac.jp/lab/mt/)を発見。慶應大学SFCの熊坂賢次氏や小檜山賢二氏がやっている研究室のサイトから天笠邦一氏による記事。
k-tai lab: マクロなケータイ論01: 永遠の脇役
http://ktai.sfc.keio.ac.jp/2004/06/aaaaaaaaeaacaei_1.html
k-tai lab: マクロなケータイ論02 :夢見るインターネット・恋するケータイ
http://ktai.sfc.keio.ac.jp/2004/06/aaaaaaaae02_eaa.html
k-tai lab: マクロなケータイ論03: それってホントにケータ(ザ)イ的?
http://ktai.sfc.keio.ac.jp/2004/07/aaaaaaaae03_aaa_1.html
携帯とPCでのネットについての比較は01を。03は最近の高校生の家庭教師をした時のエピソードから情報流通モデルの仮説で面白い。
ここでリンクされていて思い出したよ。
ネットの優等生はケータイが苦手? - CNET Japan
http://japan.cnet.com/column/tm/story/0,2000050611,20069279,00.htm
をきっかけに、2004年にスラドで議論があったんだ。
スラッシュドット ジャパン | 旧来ツール派は携帯電話を使いこなせているか?
http://slashdot.jp/mobile/04/06/21/0442238.shtml?topic=97
その中でこういう話が出てきた。
http://slashdot.jp/comments.pl?sid=189532&cid=573873

実は、昨年、某大出版社の某雑誌の某読者アンケートで、その某雑誌のWebへのアクセスとか、普段の通信になにを使っているか、とか、年間の所得はいくら、などという「生活全般+ネット生活」に関するアンケートを行ったのです。

そこでわかってきたことは、ケータイを使いこなす、という人はやはり若い人(10代から20代中盤)に多く、その人たちの所得と生活を追ってみると、要するに所得が低いのでPCが買えない。だから「安い」ケータイを使いこなす(使いこなさざるを得ない)ということがわかってきました。

携帯のネット使用時間とPCでのネット使用時間を同時に調べたアンケートデータがあると面白そうなんだけどなあ、なんて思っていたら、マクロなケータイ論01でリンクされていた電通のレポートで、収入も含めたかなり細かいデータを出していて面白い。
メディアコミュニケーション研究 第5回生活者情報利用調査レポート i-life 2003 〜情報社会に生きる
http://dci.dentsu.co.jp/pdf/I-LIFE2003.pdf
このレポートは情報リテラシーという指数を作り出し、そこで層をわけて見ていくというデータ。2003年とちょっと古いが、調査データを見るとADSLが急速に普及した時期であることがわかる。

また、情報リテラシーは個人年収の格差も生み出している。 図表1-10によれば、やはり情報リテラシーが高い層ほど、年収に恵まれていることが一目瞭然で、平均の個人年収ではHH層は最も高い704万円で、最も低いL層とは150万円の格差がついている。また、1千万以上の年収の比率を見ても、HH層の17%とL層の3%とは大きな差がある。 各グループごとに年齢的な差異は大きくないのは既に見たとおりであり、情報リテラシーが年収格差のドライバになっているのはデータから明らかである。

9ページより。HH層が情報リテラシー指数が高い層で、L層が低い層。ただ、ここでは情報リテラシーでわけており、世代でわけたデータはないので、高年齢層が年収を引き上げている可能性は高い。
このレポートの感想としては、PCでのネットは会社や学校が主体で、自宅では携帯という層がかなり多そうだということ。携帯でしかネットをやってない層は低収入で、特に高年齢層になると管理職になっている率も低い、という。
そして、これを読むと、どうも「下流社会」話でいわれている携帯の位置は怪しい気がする。ただ、このレポートは携帯でのネットが主流のままでは、良い情報社会にならないというスタンスなので、携帯でのネットに対してネガティブなスタンスではある。
整理すれば、「PCでネットをやるのは何だかんだいってまだまだハードルが高い、まだまだ携帯が主流」と見るのか、「もはやPCは誰にでも普及した。携帯でしかネットでやってない人間は少数」と見るかの違いだろうか。
ただ、自分の今の印象としては、下流社会論は、携帯主体でネットに接続している層は見ないことにして、「PCでインターネットやっていても中流じゃない、貧乏人なんじゃ!」って感じがするなあ。もっとひどい深読みをすれば「2chとかブログとかでいろいろ書き散らしている俺様の気にくわない素人評論家モドキはみんな貧乏人!」って言いたいんじゃないかと(笑)。
ネットの優等生はケータイが苦手? - CNET Japan
http://japan.cnet.com/column/tm/story/0,2000050611,20069279,00.htm
あとこれを読み直して気になったのがこの部分。

 そんなSFCの学生が変わるのは就職活動を始める時だ。それまで昼間キャンパスにいる時も常に自分のノートパソコンでオンラインという生活をしていたが、就職活動を始めると昼間手元にあるコミュニケーションツールはメッセンジャーではなくケータイだけになる。夜家に帰ってはじめてパソコンに触るという生活。これはすなわち一般的な大学生と同じコミュニケーション形態になるわけだ。

最近の就職活動はネット主体になってきて、PCがないと話にならないと聞いていたので意外だった。就職活動をするようになってPCを買う、みたいな人が多いと。今は大学に入ったら、自分用PCを購入するぐらいの感じになってそう。